スポーツ観戦はウェルビーイングの向上に効果的?日本の研究チームが発表
開催中のパリオリンピックでは、どの競技でも熱戦が続いている。そして、世界中の多くの人たちが開幕以来、メダルをかけて試合に臨むアスリートたちに熱い声援を送っている。 【写真】メンタルヘルスに影響を及ぼす5つのこと 夢中になってスポーツの試合を観戦するのは、もちろん楽しいこと。だが、日本の研究チームが先ごろ発表した研究結果によると、観戦はただ楽しいだけでなく、私たちのメンタルヘルスに良い効果をもたらし、ウェルビーイング(幸福度)を高める可能性があるという。 早稲田大学の佐藤晋太郎准教授(スポーツ科学)が率いる研究チームがスポーツ業界に関するジャーナル『スポーツ・マネジメント・レビュー』に発表した研究結果は、スポーツ観戦は情報処理にかかわる脳の報酬系を活性化させ、一時的にウェルビーイングを向上させること、継続的な観戦は報酬系を構造的に変化させる可能性があることを示している。
どんな調査を実施?
研究チームはまず、過去に日本人2万人を対象に行われた調査結果を分析。さらに、208人を対象として、スポーツ観戦に関するアンケートを実施した。また、磁気共鳴画像装置(MRI)を用いて、14人の脳の画像撮影検査を行った。 最初の2つの調査の結果は、スポーツ観戦とウェルビーイングの向上に関連性があることを明らかにしたという。人気の高いスポーツ(野球やサッカーなど)を見ているときの幸福感は、相対的に人気の低いスポーツ(ゴルフなど)を見ているときよりも、さらに高まるとみられている。 いっぽうMRIによる検査では、スポーツの試合を見るとき、幸福感をもたらす報酬系が活性化されていたことが確認された。さらに、スポーツをより頻繁に観戦する人の方が、報酬系に関連のある領域の灰白質(神経細胞の細胞体が集まっている部分)の体積が大きくなっていることが示された。つまり、観戦を繰り返すことによって脳には構造的な変化が起こり、長期的なウェルビーイングの促進につながると推測できるという。 過去の研究によれば、灰白質は感覚、随意運動(自分の意志で行う運動)、学習、発話、認知などの情報処理をつかさどっており、私たちが日々正常に機能するために最も重要な役割を果たすとされている。 佐藤准教授は、主観的、客観的な幸福度の測定方法のどちらでも、スポーツ観戦がウェルビーイングに前向きな影響を及ぼすことが確認されたと説明している。また、観戦は報酬系の構造的な変化を誘発することで、その人にとっての長期的な利益をもたらすことになるという。