音楽は「人」を通じて好きになる――総再生数3億回、YOASOBI「夜に駆ける」大ヒットの背景
昨年末リリースのデビュー曲「夜に駆ける」が、SNSを中心に大きな話題を呼んでいるYOASOBI(ヨアソビ)。「夜に駆ける」はコロナ禍のなか、5月以降各チャートを席巻。YouTubeとサブスクを合わせれば、再生数は3億回に達した。「小説を音楽に」というコンセプトでひた走る2人組に、話を聞いた。(取材・文:松島功/撮影:佐々木康太/Yahoo!ニュース 特集編集部)
「音として聴いて気持ちいいから」
「これだけの人数に聴いてもらっているのは、『音として聴いて気持ちいいから』だと思う。歌詞に感情移入してくれる人もいれば、一方で歌詞を聴かない方もいますし。私の場合は『歌声が聴いていて気持ちいいっ!』て、そこだと。人にシェアしたくなるときって相当心躍らされてないとお薦めしたりしないので」
こう語るのは、YOASOBIのボーカルのikura(20)。コンポーザーのAyase(26)も言う。 「SNSを通じて知った情報の拡散力も本当に大切ですが、結局はやっぱり『人と人』。無邪気に『布教』したくなる良さ、『この曲いいからっ!』て周りに言いたくなる要素は詰めこみたいと思うし、そう言って恥ずかしくないような作品と思っています」
「投稿サイトの小説を音楽にする」というコンセプトで2019年に誕生したYOASOBI。ボーカロイドのプロデューサーだったAyaseと、シンガー・ソングライターの「幾田りら」として活動していたikuraがタッグを組んだ。 Ayaseは、5歳からピアノを学び、高校時代はバンドでボーカルを務めた音楽少年。しかし、その後、体調を崩し、そうした状況でも音楽を続けようとするなかで出会ったのがボーカロイドだった。かたやikuraは、小学6年生から作詞・作曲を始め、中学・高校時代も音楽活動をしながら、さまざまなオーディションを受けるなど、自身の歌が多くの人に聴かれる機会を地道に探し求めてきた。
最初は正解がわからなかった
昨年末リリースした「夜に駆ける」は、サブスクでの人気を測る大きな指標、Billboard JAPANのストリーミング・ソング・チャートで2億回再生を突破。あいみょん、Official髭男dism、King Gnuなどと並ぶ数字を、まだ持ち歌が5曲という新人ユニットながら記録した。YouTubeでも、MVが9000万回以上、ikuraの歌唱動画が5000万回以上も再生されている。