音楽は「人」を通じて好きになる――総再生数3億回、YOASOBI「夜に駆ける」大ヒットの背景
昔の歌謡曲の感覚がメロディーにある
ikuraは、自身がアコースティックユニット「ぷらそにか」のメンバーでもあることも大きいと語る。 「私たちがYOASOBIだけの2人じゃないのも肝かなって。AyaseさんはボカロPの活動、私はシンガー・ソングライターとして。YOASOBIだけではない、深く掘れるパーソナルな部分が、2人ともいくつもある。もっとその人のことを知れるっていうのは、興味をもって好きになってもらう理由の一つなのかなと」
「僕も僕で活動があって、ikuraも幾田りらの活動があって、YOASOBIを通してその二つもそれぞれ大きくなるっていうのも、YOASOBIのストーリーにおいてすごく大事なところで。チーム全体で大きくなっていくっていうことは考えていますし、小説を音楽にするっていうコンセプトにまだまだ面白い広がり方を出せると思っているので、どんどんチャレンジしていきたいですね」(Ayase)
個々の活動の存在が、ファンの総数を底上げしているのは確かだろう。2人のInstagramを分析すると、それぞれのファンの年代・性別は全く異なっている。Ayaseには若い女性ファン、ikuraには年上の男性ファンが多く、結果的に補い合いながら幅広い年代層を押さえている。ネット発なだけに若年層に人気というイメージも強いが、幅広い世代のリスナーを魅了しているのだ。その理由をAyaseはこう考えている。 「昔の歌謡曲とかすごく好きで。ユーミン、昔のジャニーズ、久保田利伸さんとか。そういうメロディーの感じが好きでずっとやってきたのもあります。周りでよく聞くのが、小学校でYOASOBIが流行っていて、子どもが家で何度も聞いていたら、お父さんやお母さんもはまってくれたっていう話。サウンドは常に最先端を意識して作っているんですけど、自分の好きなメロディーの根底にあるものが、日本人が昔から聴きなじみのある感じなので、そこがうまくフィットしてくれたりしたのかなって」