<ウクライナ現地報告>ウクライナ軍報道官インタビュー(1) 「強力な防空システム必要」「戦死遺族補償金未払いは取り組むべき課題」(写真7枚+地図)
◆「このままでは防空態勢に限界」
ウクライナ南東部一帯では、激しい戦闘が続く。ロシア軍は攻勢を強め、ウクライナ軍は武器不足のなか、厳しい局面にある。ウクライナ軍・オデーサ作戦戦略群管区のナタリア・フメニュク報道官に、防空態勢の課題やウクライナ軍内部で起きている戦死兵士遺族への補償金未払問題などについて聞いた。(オデーサ・玉本英子・アジアプレス) 【動画で見る】<ウクライナ>オデーサ・オペラ・バレエ劇場の地下シェルター
■ ウクライナ軍の防空機能によって、連日、ロシア軍のミサイルなどを迎撃していますが、それでも一部は防空網をすり抜けて飛来します。防空態勢の課題は何でしょうか? 【フメニュク報道官】 南部地域について言えば、おもに攻撃を加えてくるのは黒海方面からです。わが軍が民間人を守るために、ロシア軍が発射した飛来物体を迎撃する手段として、到達前に海上で目標を探知して破壊できる長距離兵器が不可欠です。そうすれば、飛来途中で墜落した兵器の残骸の落下による民間インフラや市民への被害を減少させることができます。
これまでの電子戦の経験から、飛来したドローンを電子戦システムで妨害できても、制御を失ったドローンが予測不能な方向に飛び、別のリスクが生じることがあります。わが軍の防空部隊が、(住宅地のない)開けた地域で迎撃態勢がとれる余裕があればいいのですが、電子戦で電波照射・攪乱の結果、もし制御不能となったドローンが人口密集地域に入り込んでしまった場合、わが軍は住民から感謝を得られないものとなるでしょう。 ゆえに、電子戦については、特定の居住区を封鎖する電子ドームのバリアーのようなものを構築する最新鋭の兵器を必要としています。
◆戦死兵士遺族への補償金未払い問題
■ 先日、兵士として戦っていた夫が戦死した女性を取材しました。行政の官僚的な対応や軍部隊のミスの結果、書類不備などを理由に、本来受け取れるはずの補償を受給できない状況で、彼女は悲嘆に暮れていました。彼女には小さな子どもがいて、経済的余裕もなく、生活は追い詰められていました。このような事実は、遺族をさらに落胆させ、また軍に対し、国民の心が離れていく結果を招いているのではないでしょうか。このシステムを変えるために何らかの措置を講じる予定はありますか?