<ウクライナ現地報告>ウクライナ軍報道官インタビュー(1) 「強力な防空システム必要」「戦死遺族補償金未払いは取り組むべき課題」(写真7枚+地図)
【フメニュク報道官】 残念ながら、このような事例が存在するのは事実です。その背景には、2つの理由があると言えます。 1つは、人的要因であり、すべての行政部署の担当者が、戦死者遺族に対応して金銭的補償を提供するのが困難なケースです。戦時下ということに加え、時間的な制約もあり、すべての事例に対処できているわけではないのが実状です。例えば、短期間でも外国の支援機関が、法医学関連の分野で行政の担当部署をサポートする機会があれば、より適切に対応できることでしょう。 2つめは、法的申請手続きについて国民がよく知らず、どこに申請していいかわからなかったり、間違ったところに申請してあきらめたりすることも多いのです。
国民は損失を被り、補償を必要とし、対処の必要性を認識していますが、この分野の専門家は多くないのが現状です。 愛する人を失った人びとが、他の人びとを動かすことに関与しているのも事実だからです。例えば、戦争で夫を失い、補償を受けられなかった妻は、他の人びとが将来、祖国の防衛に参加することを思いとどまらせるでしょう。「自分は夫を亡くしたが、国は自分のことを忘れてはいない、私は補償を受けられる、私はあらゆる面で支援される、私の子どもは社会的に保護されるのだ」と思ってもらえるように。 官僚的なすべての手続きを通過するのは(遺族にとって)容易ではなく、人びとは時に法的支援を必要とします。目下、我々はこの課題に取り組み、改善すべく、努力していきます。 (※註:戦死者遺族補償と扶養家族年金:戦闘任務中に戦死した兵士の遺族には補償金が支払われ、またこれとは別に戦死者の扶養家族・子女には遺族年金の定期給付を受けられる仕組みがある。所属部隊が申請に必要な書類を発行しなかったり、行政部門の官僚的対応などで、遺族が補償を受け取れず、経済的に困窮する例があいついでいる)
兵員不足のウクライナ軍。動員対象年齢が27才から25才に引き下げられることになった。以前は兵士応援の看板が多かったが、最近は入隊を呼びかける看板が多くなった。動員逃れを防ぐため抜き打ちの検問も増加。(2024年3月・オデーサ・撮影:玉本英子)
「戦死遺族補償金未払いは取り組むべき課題」とフメニュク報道官は話す。 (2024年3月・オデーサ・撮影:坂本卓) 第1回 END 第2回に続く