角刈りこわもての63歳元事件記者が保育士資格取得…"ご機嫌斜めキッズ"をたちまち笑顔に変えた必殺技
朝日新聞の事件記者だった緒方健二さんは、2022年に63歳で短大の保育学科に入学し、20歳以上年下の同級生たちと、保育士資格と幼稚園教諭免許取得を目指した。1年生の後期を迎えた緒方さんは「子どもを喜ばせる遊びネタのレパートリーも増えていき、簡単にできることは普段から貪欲に取り入れることにした」という――。 【写真】真剣な面持ちで“黄色いオーガンジーのひよこさん”を実演する、角刈りこわもての緒方健二さん ※本稿は、緒方健二『事件記者、保育士になる』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。 ■布1枚で笑ってくれるかもしれない 後期も理論と実践で様々なことを学びました。座学ではみなさまより数十年長く積んだ経験が生きることもありました。しかし、ピアノや折り紙、手遊びをはじめとした実技ではいつも助けていただきました。 不器用ながらも徐々に、子どもを喜ばせる遊びネタのレパートリーも増えていきました。簡単にできることは普段から貪欲に取り入れることにしました。 「オーガンジー」をご存知でしょうか。 薄くて透き通った平織の布地のことです。たいそう軽くて光沢があり、ウエディングドレスやコサージュに使われるそうです。 当方は短大で教わるまで知りませんでした。名称を聞いたとき、インド独立の父を称えるシュプレヒコールかと思いました。マハトマ・ガンジーさんの唱えた「非武装」、「不服従」は子どもの命を守るうえで大切なことですから。 幼稚園勤務の長かった女性教員が、ある授業で「子どもが喜びます」と実演してくださいました。20センチ四方の黄色いオーガンジーを手のひらの中で丸めます。 「あれ、何が隠れているのかな?」 何度か問い掛けた後、そっと開くと布地がもこもこっと広がり、膨らみます。 「ひよこさんだ。ぴよぴよぴよ」 昭和の名漫才コンビ、獅子てんやさんと瀬戸わんやさんの人気ネタにもひよこを題材にした「ぴっ ぴっ ぴよこちゃんじゃ……」がありました。 5歳前後だった当方は大好きでした。両手を腰に当ててひよこになりきり、へこへこ歩きながらこれを歌ったものです。 よし、いいもんみっけ。 オーガンジーを「乳幼児喜ばせ小道具」に加えよう。 ■ポケットの中の黄色いオーガンジー 求めて飛び込んだ手芸用品店で、店員さんから「何にお使いですか」と問われました。包み隠さずに申し上げ、ふわふわつるつるの生地を裁ち切っていただきました。 外出の折は必ず持ち歩いています。くしゃくしゃに丸めればズボンのポケットに収まります。 用途はひよこ遊びにとどまりません。 いったんかぶって顔を隠し、しばし間を置いてすっと取り去る「いない いない ばあ」もできます。好きに触れさせることで、つかんだり、握ったり、引っ張ったりする力を養えるかも知れません。 そうそう、口に入れることを想定して、まめに洗濯することを忘れてはなりませぬ。