「折り紙」が世界を変える! 日本の伝統文化に海外の科学者がいま大注目!!
「Origami」といえば英語でも通じるらしい(アクセントは「ガ」)。それほどまでに日本の折り紙は世界に誇るべき文化のひとつだが、最近は芸術面ではなく工学系の分野から注目が集まっているとのこと。折り紙と工学にどんな関係が? そう思って第一人者のもとを訪ねると......折り紙研究に日本の将来がかかってるんですって!(ガチ) 【図】工学系の分野から注目が集まる折り紙の構造 * * * ■きっかけは第2次世界大戦 子供の頃に遊んだ折り紙。一枚の紙からツルや飛行機、カブトなどを作り上げた経験は誰でもあるはず。ただ、子供の遊びと侮るなかれ。なんと今、世界中から注目を集めているのだ! といっても、その焦点は折り紙文化ではない。「折り紙工学」なる学術分野が生まれ、現在は宇宙開発や医学など最先端技術との融合が進んでいるのだという。 実は折り紙工学は身近な商品にも潜んでいる。例えばキリンの缶チューハイ「氷結」。缶の表面に施された「ダイヤカット」は折り紙工学から着想を得ている。 ダイヤカットの構造はNASA(米航空宇宙局)の超音速機の開発途中に発見され、この加工を施すことで強度が高められることがわかっている。しかし、その技術をなぜ缶チューハイに? キリンホールディングス広報担当はこう語る。 「氷結発売に向けてアルミ缶を開発するとき、缶を軽くするダイヤカットが応用できるのではないかと開発がスタートしました。 結論から言うと軽量化には難航してしまったのですが、缶デザインの美しさと、開缶時に形状が変化する独自性は魅力的だったため採用しました。お客さまからも『氷結といえばこのデザイン』と支持をいただいています」 なお、缶コーヒーの「FIRE」にもダイヤカットが採用されており、こちらはキリンと共同開発を行なった東洋製罐によると、従来のスチール缶と比べ強度が3倍になったという。これにより材料が従来比で30%削減できるようになった。 このように、折り紙工学の存在感は急速に高まっている。その実態を知るべく、折り紙工学分野を日本で立ち上げ、業界を牽引してきた研究者のひとりである明治大学の萩原一郎教授の研究室を訪ねた。 まず驚いたのは、その応用範囲の広さだ。研究室にはヘルメットにおむつ、ペットボトル、緩衝材など、これまでに萩原氏が手がけた製品がずらりと並んでいた。実際に折り紙ヘルメットを手に取ると、驚くほど軽く薄い。それでいて指で押しても形が変わらない、十分な強度を持っていた。 ちなみに萩原氏は大学教授になる前に日産自動車で勤務しており、現在でも世界のメーカーが利用している事故衝撃緩衝構造を開発した実績がある。しかしそれ以上の機能を持つ折り紙構造も後に発見し、特許を出願。自動車の衝撃緩衝構造に利用されることも目指しているそうだ。 まずは萩原氏に、折り紙工学の歴史について尋ねた。 「折り紙工学とは、折り紙で蓄積された知見や技術を産業に応用する学問です。折り紙技術が産業化されたきっかけのひとつは、第2次世界大戦中の英国での飛行機開発。 蜂の巣のように正六角形が連なったハニカム構造を素材に用いることで飛行機のパーツの軽量化が実現したのですが、これは七夕の網飾りにヒントを得たそうです。この技術は世界に広がり、現在では数兆円規模の産業となっています」 折り紙の技術自体は日本で発展していたものの、英国に先を越された事実に危機感を覚えた萩原氏は、ほかの研究者と共同で折り紙工学の研究会を立ち上げた。その活動のかいもあって、折り紙工学の重要性が国内でも徐々に浸透していったという。