「折り紙」が世界を変える! 日本の伝統文化に海外の科学者がいま大注目!!
■観光ガイドから人工衛星まで 折り紙工学のキモは、モノを折ったり曲げたりする「折り紙構造」を用いて機能を向上させることである。 「向上する機能は大きく分けてふたつ。ひとつは『軽さと強さの最大化』で、もうひとつは『展開収縮性』、つまり小さく折り畳み、大きく展開できる性質です」(萩原氏) 前者はダイヤカット缶やハニカム構造などに見られ、折り紙工学が発展する基盤になった。そして近年、最先端技術と組み合わせて注目を集めているのが展開収縮性だ。その応用場面は多岐にわたるので、順に紹介していこう。 いきなりスケールの大きい話だが、代表的な応用例は宇宙開発だ。宇宙へ探査機を送るには円柱形のロケットに載せる必要があり、軽さもコンパクトさも求められるからだ。 1970年に東京大学の三浦公亮氏によって考案された「ミウラ折り」は、世界的に有名な技術である。大きな紙であっても小さく折り畳め、対角を引くことで簡単に展開できる折り方で、これを人工衛星の太陽光パネルに応用するわけだ。 太陽光パネルは人工衛星の電力量を左右する〝心臓〟だから、極端に小さい設計にすることはできない。そのため太陽光パネルを小さく収め、安全に宇宙で展開させることができる技術は重宝された。ミウラ折りはその構造自体もシンプルなため、観光ガイドや電車の路線図といった身近な紙製品に利用されている。 このほか、観測精度の向上にも折り紙工学が役立っている。NASAは現在、太陽系以外で地球に似た惑星を探しているが、そこでネックなのが恒星(自ら輝く星)の光である。調べたい惑星を高い精度で観測しようと思うと、それより数億倍明るい近辺の恒星が邪魔になるからだ。 そこで役立つのがスターシェード、いわば巨大な日傘だ。恒星と宇宙望遠鏡の間で展開し、恒星からの光を遮断することで通常では見えない惑星の姿を浮き彫りにできる。 スターシェードは宇宙空間で直径34m程度に展開する。一方、これを搭載するロケットはそこまで大きくない。 例えばSpaceXのファルコン9ロケットの場合、搭載可能部分の直径は4.6m程度だから、単純計算でも8分の1程度まで小さくする必要がある。そこで折り紙構造を利用し、展開されるパネルをロケットに積載できるサイズに折り畳むのだ。 いつの日か、折り紙のおかげで地球に似た惑星が見つかる日が来るかも?