「折り紙」が世界を変える! 日本の伝統文化に海外の科学者がいま大注目!!
■次に応用される領域は海底!? さて、ここまで見てきたように、折り紙の産業応用は海外の事例が多い。こうした現状について、萩原氏はこう言う。 「欧米諸国と日本の大きな違いは、こうした技術の応用が民間スタートだけなのか、軍事スタートかという点です。よく知られているように、宇宙開発は軍事分野と密接に関係しています。そして宇宙開発、ひいては軍事分野は民間企業と比べて予算が潤沢ですから、海外のほうがより産業応用の可能性を探れたのでしょうね」 軍事産業の弱い日本では予算のつき方が大きく違ったわけだ。とはいえ実例も増えてきたことで、日本でも民間発の産業応用が増加してきた。今がまさに日本の折り紙工学の転換期だと萩原氏は言う。 地上と宇宙での展開がよく見られる中で、萩原氏が熱視線を送るのはなんと海底だ。 「これまで見てきたように、折り紙工学のキモは小さく畳んで大きく展開できること。この特性が、今盛んになっている海底での資源開発に役立つのです。というのも、宇宙同様、海底に運搬できるものはサイズも限られますし、何より地上で組み立てたものでは水の抵抗が大きく非効率です。 素材を海底に運び、現地で組み立てるスタイルを採用するならば、折り紙工学との相性は抜群でしょう。開発拠点となる基地をスムーズに築いたり、物資運搬の効率をより向上させられるはずです。 今は各国が海底に気づいていませんが、遠くない将来、世界各国がこちらにも目を向け、宇宙のように開発が過熱するはず。 日本は世界で6番目の排他的経済水域の面積を持つ海洋国家ですから、チャンスは転がっています。折り紙工学の産業応用を進めることでこの分野で大きく成功し、世界をリードする可能性を信じたいですね」 手のひらに収まるちっぽけな折り紙から、宇宙や海底のフロンティアを探る技術が生まれた。そしてその折り紙技術が、日本の将来を救うカギとなるかもしれない。 取材・文/佐々木 亮 撮影/鈴木大喜 イラスト/服部元信 写真/iStock