出荷台数の成長率は20%…注目「折り畳めるスマホ」、部品サプライヤーに商機あり
折り畳めるスマートフォンが注目を浴びている。パリ五輪では、選手が表彰台で自分自身を撮影する「自撮り」で、折り畳みスマホを使う姿が印象的だった。8月には米グーグルが新製品の発売を発表したように、海外メーカーは続々と折り畳めるスマホを投入する。同時にハードウエアの変化により、スマホ内部に搭載するコネクターをはじめとした部品への需要が高まることは部品サプライヤーにとっての商機になりそうだ。(阿部未沙子) 【写真】ソフトバンクが投入した折り畳みスマホ「モトローラ レーザー 40s」 米グーグルが発表した折り畳みスマホの新製品は「グーグルピクセル9プロフォールド」。9月4日に発売する。同社の従来品「グーグルピクセルフォールド」と比べて、厚さを1・6ミリメートル薄くし10・5ミリメートルとした。また、素材を変えて重さを26グラム減の257グラムにした。 パリ五輪で、選手らが使っていたのは韓国サムスン電子製だ。同社は折り畳めるスマホ「ギャラクシーZフリップ6」を7月に発表。同製品の特別仕様をパリ五輪やパラリンピック競技大会の選手に提供した。 ほかにも、米モトローラ・モビリティや中国華為技術(ファーウェイ)、小米技術(シャオミ)、vivo(ビボ)、オッポなど複数のメーカーが折り畳みスマホ市場でしのぎを削る。 米調査会社のIDCによると、折り畳みスマホの世界出荷台数は2024年に2500万台に達すると予測し、23―28年の年平均成長率(CAGR)は20・3%とした。 スマホメーカーが折り畳める構造を採用することで、電子部品の搭載個数の増加も期待できる。富士キメラ総研(東京都中央区)第二部の三橋慎吾課長は「メーンボードが2分割されているため、上部の基板と下部の基板を接続するためのコネクターが必要になる」と指摘する。 さらに折り畳めるスマホの上部と下部にバッテリーがそれぞれ搭載されていることから、バッテリーと電気回路とをつなぐバッテリーコネクターの搭載数も従来と比べて増える。スマホの形状の変化により「コネクターメーカーは恩恵を受けているのではないか」(三橋課長)と推測する。 ほかにも、例えばサムスン電子のギャラクシーZフリップ6では背面にも液晶を搭載するため、液晶の需要増加が見込まれる。さらに、薄型化も求められているため「電子部品は低背化が進む可能性がある」(三橋課長)とみる。 実際、電子部品各社の24年4―6月期決算ではスマホ向け部品の販売拡大が業績の押し上げにつながった企業もある。ただ、スマホ市場の伸び悩みは各社共通の懸念材料だ。スマホ市場を重視しながらも、電動化が進む自動車市場向けに一段と注力するメーカーもある。 米IDCの調査ではスマホの世界出荷台数は前年比4%増の約12億台を見込む。スマホの形状が多様化することで消費者の購買意欲を喚起し、市場回復への道筋をつけられるかに期待がかかる。