「どんな育ちをしたって、100歳になればひとりぼっちですよ」佐藤愛子が“わがままに生きる”理由【草笛光子で映画化】
わがままは私の性分ですから。それと育ち方ね。うちは親もわがままで、わがままが悪いものじゃないというふうに育っている。だからこんなのができちゃったわけね。育った家庭が不良の集まりでしたから。 佐藤さんの父は、作家の佐藤紅緑。母は女優だったシナ。兄は作詞家のサトウハチロー。佐藤さんは佐藤家3代を小説『血脈』に著し、2000年に菊池寛賞を受賞した。 昔なら、『女大学』がありました。そういうものを守らなきゃいけないという家庭に育った人は、やっぱりちゃんとしたお方ですよ。ただ私はお友達にはなれない(笑)。 私みたいなのは世間狭く生きなきゃならないですよ。会合とか集まりとか出たことがない。退屈なんです、常識ってやつが。でも今は戦争に負けて時代が変わって、古い戒めが力を失って。女の人は生きよくなりましたね。
私の子どもに生まれてきた運命だからしょうがない
時代が変わったといえば、介護制度もそうだろう。今どきの「会合とか集まり」には、デイサービスやショートステイなどなども。 うちの者は私に、そういうところに行ってほしいんです。家にいられるとうるさいから。でも、それはもう、全然だめですね。 わがままが通らないから嫌なのでなく、私なんかがそういうところへ行ったら向こうが迷惑なんです。諦めて(わがままを)我慢してくれるから、気の毒だし迷惑だろうと思うわけです。そういうことを理解する力は持っている。だから家で頑張っているから、うちの者が迷惑している。それはもう、私の子どもに生まれてきた運命だからしょうがない。
孤独と折り合うことはできないから、踏ん張って受け止めている
佐藤さんは、娘の響子さん夫妻と孫の桃子さんとの二世帯住宅で暮らす。2階に3人が住み、1階が佐藤さん。怖いとか寂しいとかはないですか、と尋ねてみた。
怖いってことはないです、泥棒の方が怖がりますから(笑)。怖いことはないけど、非常に孤独ですよね。夜より昼間ね、誰ともしゃべらないでしょ。お手伝いさんはいるけれど、あちらはあちらで働いていますしね。2階の娘や孫とはそんなにしゃべることもないし、向こうもそれほど2階から降りてきません。 100歳の孤独というのは、育ち方には関係ありません。どんな育ちをしたって、100歳になればひとりぼっちですよ。受け入れるしかないですね。だって、「あなた、そんな生活してたら寂しいから、少し協調性を持ってやりなさいよ」と言われても、できないものはしょうがないですから。 孤独と折り合うということはできません。できないから、踏ん張って受け止めている。耳が聞こえないのを怒ったってしょうがないでしょ。だから聞こえるフリをして生きるという。その程度の苦労は、してるんですよ。 書く力がある時は、孤独などどうでもよかったんです。ところが書くことができなくなってきたの。書いても、読み返すと気に入らないしね。原稿用紙は机の上で真っ白なまま。仕事ができれば1人は最高のことなんですけど、できないから。そうすると、することがない。だから早く死にたいなと、思います。