Netflixシリーズ「地面師たち」大根仁監督 意識したのは海外ドラマの“容赦のなさ”【Director’s Interview Vol.426】
物語への感情移入
Q:原作があるとはいえ、専門的な知識や用語を必要とする内容です。脚本作りには時間がかかったのではないでしょうか。 大根:新庄先生が原作を書かれたときは、騙される側の事情が明らかになっていなかったのですが、僕が脚本を書き始める頃には、社内の報告書が出ていたり、それを客観的にリサーチしたノンフィクション本が出版されていました。それで「なるほど、こういう手順で騙されたのか」と色んなことが分かってきた。その辺は脚本に足していきましたね。ただ、契約の順番や、いつどこで、誰が誰と会ったかなどは、すごく複雑だったので、そこは映像向きに見やすくした部分はあります。 脚本は1年かからずに書いたと思います。たぶん4話ぐらいまで書いた時点で企画が通り、そこから5、6、7話は1ヶ月くらいで書いた記憶があります。後半の盛り上がるところは書きやすかったですね。書いていて楽しかったですし。 Q:騙す人、騙される人、巻き込まれる人、追う人と、キャラクター全員が魅力的です。役者さんに負う部分もあると思いますが、脚本段階でもキャラクター設定はかなり詰めて書かれるのでしょうか。 大根:この人にやってもらいたいなと頭の中でキャスティングしながら書いていて、ほぼみんな第一希望が通りました。だから当て書きみたいなものでしたね。脚本を作っているとプロデューサーからよく言われるのが「キャラクターへの感情移入」。でもこの話って感情移入のしどころがないんですよ(笑)。だから、キャラクターへの感情移入ではなく、進んでいく物語に対する「え、どうなるの?どうなるの?」という興味の方を意識しました。誰にも感情移入させないけれど、でも物語自体に感情移入というか、止めずに観続けてしまうような。 Q:プロデューサーが言う「キャラクターへの感情移入」とは、他の作品でもよく言われるのでしょうか。 大根:よく言われますね。感情移入って大きくは2種類で、応援か共感だと思うんです。でもこれは、応援のしようもないし、共感のしようもないという(笑)。じゃあ、どこに応援なり、共感なりを置くかというと、物語自体になってくるんです。
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