<Jリーグ>無観客試合から学んだものは何か?
二度と同じことを繰り返さないために
無観客試合の数日前に、レッズの男性サポーターと話をする機会を持った。 今春に大学を卒業したそのサポーターはJ1クラブのない地方への就職が決まっていて、23日のエスパルス戦が10年来愛してきたチームを応援する、実質的な最後の試合となるはずだった。 無情にも夢を奪われたことに対して、人種差別的な横断幕を掲げて無期限の入場禁止処分を受けた一部サポーターだけでなく、自分自身を含めた他のサポーター、そしてレッズというクラブの連帯責任を強く訴えていた。 「横断幕を見てみぬふりをしてしまった僕たちにも責任があるし、試合中にすぐ撤去できなかったクラブにも責任がある。制裁措置が勝ち点の剥奪などではなくて逆によかった。エスパルス戦を見られなくなったのは本当に残念ですけど、レッズの未来を考えれば、迅速に対処してくれたチェアマンには本当に感謝しています」 右ワイドの位置から、絶対の武器と自信を持つドリブルで積極的に仕掛ける。後半31分。ドルブルで対面のマーカーをかわし、別の選手のプレッシャーに体勢を崩しながらも粘り、ゴールラインぎりぎりから相手ゴール前へ低く、速いクロスを送る。 途中出場していたFW李忠成が相手DFと交錯しながら潰れる。こぼれたボールにトップスピードで飛び込んできたのは、今シーズンからレッズの象徴である「9」番を背負うFW原口元気。魂を込めて振り抜いた右足から放たれた、強烈な一撃がゴールネットを揺らした。 李の投入に伴い、原口は後半途中から左ワイドでプレーしていた。3バックの左で原口とコンビを組んだ槙野は、してやったりの表情を浮かべた。 「元気のよさを最大限に生かすには守備をさせず、攻撃に余力を残させること。関根の前への推進力同様、原口の左からのカットインは相手にとって危険なプレーなので、それを発揮させるべくサポートしました」 試合はそのまま1対1のドローに終わった。エスパルスの長沢とレッズの関根。サッカー人生のアニバーサリーを刻んだ2人は無観客試合ゆえに平常心でのプレーを貫き、結果を残すことができたわけだ。 サガン戦の直後に横断幕の一件をリツイートし、世の中に広く知らしめた槙野は言う。ブンデスリーガのケルンでプレーした槙野もまた、ドイツの地で差別に近い扱いを受けたという。