<Jリーグ>無観客試合から学んだものは何か?
229人に厳戒態勢
初めて経験する無観客試合がもたらす難しさを、槙野はピッチの上で何度も噛みしめていた。 「僕たちはいいプレーに対しての拍手や声援に勇気づけられ、いつも以上のプレーを見せることができる。ミスに対するため息も同じ。プレーに対するリアクションがない中で、あらためてサポーターの皆さんがあっての選手だということが分かりました。無観客試合で唯一ポジティブに考えられたことは、近くにいる味方とのコミュニケーション。よくないプレーをしたときには励まし、事細かに修正することを90分間、必死に続けました」 無観客試合を取材するのは、2005年6月にタイ・バンコクで行われた北朝鮮代表とのW杯アジア最終予選以来、2度目となる。このときは勝てばドイツ大会出場が決まる独特の緊張感と、スタジアムのすぐ外に集結したサポーターたちが発し続けた声援がスタジアムの中にまで聞こえてきた。 翻って今回は、Jリーグから課された制裁の意味をレッズ側が重視。ホームページ上でスタジアム周辺に来ること自体の自粛を要請し、最寄りの埼玉高速鉄道のスタジアム周辺や浦和美薗駅から連なる道などに社員を含めた229人を警備要員として配置した。 その全員が午前中から、次のようなプラカードを手にして協力を訴えていた。 『埼玉スタジアム2002 公園内には入れません』 『無観客試合開催につき、スタジアム周辺及び公園内への入場・応援はお断りいたします』 レッズ関係者によれば、大きな混乱はなく試合終了を迎えられたという。試合後に記者会見したレッズの淵田敬三社長も、関係者各位へ向かって深々と頭を下げた。 「趣旨を理解していただいた浦和レッズのファンとサポーター、そして清水エスパルスのファンとサポーターに御礼と感謝を申し上げたい」 選手交代のアナウンスも何もない中で、後半開始からピッチに投入されたレッズのルーキー、18歳のMF関根貴大は自分でも驚くほどの平常心で待望のJ1デビュー戦に臨んだ。 「逆に大勢の観客が入った中で自分はやったことがないので、いつも通りできたと思います」