トランプ氏の60%関税、反撃態勢整える中国-応戦すれば多大な影響
(ブルームバーグ): 2018年に当時のトランプ米大統領が中国との貿易戦争を始めると、中国は後手に回り、対応がふらついた。
24年の米大統領選を制したトランプ氏の次期政権発足に備え、中国共産党の習近平総書記(国家主席)は万全の態勢を整えているが、応戦すれば失うものも大きい。
トランプ氏は中国製品に最大60%の関税を課すと示唆。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は、こうした水準の関税は米中貿易を壊滅させると分析している。
トランプ氏が21年に大統領を退くと、バイデン政権は先端テクノロジーに関する一連の対中輸出規制を強化したが、それにトランプ氏の新たな関税が加わることになる。
第1次トランプ政権以降、中国は経済の強靭(きょうじん)化を図り、米国の政策に反撃できる戦略的措置を講じてきた。
その鍵となったのが、政策手段の拡充だ。それには農産物への関税や主要な米企業を標的にする「エンティティーリスト」、重要な原材料の輸出規制などが含まれる。
元中国人民解放軍幹部で現在は清華大学戦略・安全研究センター(CISS)シニアフェローの周波氏は、「心理的な面で言えば、中国は再びトランプ氏と向き合う準備が以前と比べずっと整っている」と話した。
中国国営メディアによれば、習氏はトランプ氏の大統領選勝利を祝福し、「健全で持続可能」な米中関係を呼びかけた。
トランプ次期政権への準備に怠りない習指導部だが、それでも、第1ラウンドよりもはるかに壊滅的な結果をもたらす恐れのある関税合戦を回避したいと考えているとみられる。
デフレ圧力や不動産不況に苦しむ国内経済を浮揚させるため、中国は電気自動車(EV)やバッテリーなどの輸出に頼っている。そうした中で、北京で4日に開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会が8日まで開催されている。
ナティクシスのアジア太平洋担当チーフエコノミスト、アリシア・ガルシアエレロ氏によると、「中国は60%の関税に対し報復することはほとんどできない」。中国にできるのは「市場が中国を罰しないよう、一段と大規模な刺激策を発表すること」だという。