著者の荒井さん、一村の魅力語る 孤高の画家の奄美時代を小説に 奄美市で講演会
小説「田中一村 かそけき光の彼方」(南方新社)の出版記念講演会が8日、鹿児島県奄美市名瀬のアマホームPLAZAであった。著者の荒井曜さん(67)は「一村は印象派に見え、モネやセザンヌといった世界水準にいる」と絶賛。「一村もそうだが、僕も奄美の人々の母性に支えられて小説を完成できたと思っている」と述べた。 荒井さんは群馬県前橋市生まれ、多摩美術大学卒。著書に「慈しむ男」「水上の光」などがある。 今回の小説は東京都美術館で開催される田中一村の大回顧展「田中一村 奄美の光 魂の絵画」(9月19日~12月1日)に合わせて8月に刊行した。関係者への取材や100点余りの文献調査で綿密な時代考証を重ね、孤高の画家・田中一村の奄美時代を描いた。 講演会は2部構成。1部では荒井さんが小説執筆の軌跡を振り返りながら、一村の作品を解説。「画家は生身の人間だから、起こったことに左右されて色彩も変わるし、絵も変わる。時系列で文献を探っていくと、一村の心理が分かってきた」などと語った。 2部はトークセッション。一村会の美佐恒七さん、ムンカリ工芸の福田信廣さんら、荒井さんの取材協力者7人が登壇し、「ステテコにランニングシャツ姿で、よく本茶峠に歩いて登って行くのを見掛けた」「縁側で正座して描いていたのを思い出す」などと一村の在りし日のエピソードを紹介した。