電車でもバスでもなく「船」で都内を移動 期待高まる「舟運」を記者が体験
都心から羽田空港に向かう船。歴史ある橋の下を通るなど、普段と違う視点から東京を眺めることができる(5月15日、山田恵介撮影)
年間の訪日外国人が2000万人を超える中、電車やバスに代わる交通手段として今、東京都内を「船」で移動する「舟運」の可能性が模索されている。国土交通省は昨年9月から、羽田空港と都心とを船で行き来する社会実験を始動。参加した乗客からは、東京を普段とは違う海上の視点から眺めることができるとして好評を呼んでいる。東京の新たな観光資源としても期待が高まる「舟運」を、記者が実際に乗って体験してみた。
船から見える東京に、大人も子どもも歓声
5月15日、午後2時。JR水道橋駅近くの船着き場から、羽田空港船着き場へ1時間50分で向かう船が出港した。エンジンの回転数が上がり、船のスピードが少しずつ速くなっていく。船には都内に住む夫婦や家族連れなど25人が乗り、ガイドの説明を聞きながら、船から見上げる都心の景色を写真や動画に収めていた。 日本橋川から神田川に入った。右側にはJR御茶ノ水駅、そして目の前には東京メトロ丸の内線の線路がある。ちょうど電車が頭上を走り抜けた。電車の「お腹」の部分を見ることができ、船上は大人も子どもも「おー」と歓声を上げている。
あっという間の1時間50分
JR秋葉原駅を左手に見ながら神田川を進んでいくと、やがて隅田川に合流する。両国橋や永代橋などを抜けると潮の香りがしてきた。東京湾だ。今年11月には移転する築地市場や、この日はまだ開通前の築地大橋も見ることができた。 東京湾を経て、東京モノレールが走り抜ける様子を右手に見ながら、天王洲運河を進んでいく。羽田空港が近づいてきた。ゴールの船着き場はまではあと少しだ。この時はちょうど、B滑走路に飛行機が着陸する様子を見ることができた。1時間50分の船旅はあっという間だった。
東京の新たな一面を発見しながら目的地へ
観光立国を目指す日本。訪日外国人は年間2000万人を超えた。羽田航空も国際化が進み、都心と空港と結ぶ交通は、時間短縮の利便性が現在求められている。羽田空港国際線ターミナルからは京急電鉄では14分で品川駅についてしまう。 利便性という意味では舟運は劣る面もあるが、都心の高層ビルや足早に歩く人々を見ながら船で空港へというのは観光ととらえれば1時間50分の船旅は長くは感じなかった。むしろ東京の新たな一面を数多く発見しているうちに目的地についてしまうので、とても短く感じた。すでにある水上クルーズや、屋形船とはまた違った風景、距離感を堪能できるだろう。
6月も運行予定
国交省の社会実験は、昨年9月、今年2月に続き、今回が3回目で、6月にも予定されている。コースは、今回記者が体験した水道橋―羽田空港を往復するほかに横浜―羽田空港や天王洲―目黒川などでも乗ることができる。水道橋―羽田―横浜コースを運航している羽田旅客サービスによると、すでに一部満席の日もあるが、まだ若干の席に余裕がある日もあるという。 社会実験の詳細などについては国交省のHPから確認できる。 ※運航中コースの概要はこちら (山田恵介/THE EAST TIMES)