夏モデルで新機種なしのガラケー事情
今年も各携帯電話キャリアから夏モデルが出そろいましたが、そのラインアップを見て驚かれた方も多いのではないでしょうか。なんと、2013年夏モデルは各キャリアともスマートフォンのみで、従来型の携帯電話、いわゆる「ガラケー」が1機種も含まれていないのです。
実はスマホ利用率の低い日本
確かに最近は、都内で通勤・通学時に電車内を見回してもスマートフォンを使用している人ばかりで、ガラケーユーザーが少なくなっているように感じますが、実情はどうなのでしょうか。 総務省が7月16日に公表した「平成25年度版 情報通信白書」によると、日本のスマートフォン利用率は38.2%。これはシンガポール(76.8%)、韓国(67.8%)、英国(56.3%)などと比べても分かる通り、先進国としてはかなり低い数値です。この結果から、日本ではスマートフォン利用者が以前より増えてはいるものの、その需要は都市部に集中しており、地方部ではまだガラケーニーズが高いのではないかと予想されます。
各キャリアが新機種のラインアップをスマートフォンに絞り込んだ理由のひとつには、この“利用率を上げる”という側面が挙げられます。しかし内情的には、もう少し複雑な理由も絡んでいるのです。 そもそもガラケーとは、日本市場向けに独自の機能を盛り込んだ「ガラパゴス携帯電話」を略したものです。日本の携帯電話には、手軽にテレビ番組が見られる「ワンセグ」や、FeliCaチップを使った「おサイフケータイ」など、世界でも比較的珍しい機能が盛り込まれており、独自の進化を遂げたガラパゴス諸島の生態系に見立ててこう呼ばれるようになりました。しかしこのガラケー、実は端末を開発するメーカーにとってはかなり大きな負担なのです。 そもそもガラケーは、開発に多大な手間とコスト、時間を要します。OS自体が独自開発ですし、多彩な機能を司るソフトウェアもそれぞれ別途開発しなければいけません。一方でスマートフォンを見ると、たとえばAndroid搭載モデルの場合、OS自体はオープンソースなので開発が不要です。また、iOSやAndroidではアプリ開発用のコードが公開されているため、短時間かつ低コストで独自アプリが開発できます。 さらに、販売する市場の問題もあります。たとえ開発コストが高くても販売台数が伸びれば良いのですが、ガラケーは日本市場に特化した機能が満載なので、当然ながら販売市場も日本国内に限られます。たとえローカライズして海外市場へ持ち込んでも、現地のニーズに合わなければ売れません。このように、採算が合わないガラケーから、開発しやすいスマートフォンへの移行は、メーカーとしても大きなメリットがあるのです。