【甲子園熱戦レポート│10日目】敗戦の悔しい経験もまた人生訓――スクイズ失敗後に崩れた左腕へ広陵・中井監督が投げかけた“愛の言葉”<SLUGGER>
甲子園の敗戦とは人生訓のようなものだ。 少なくとも広陵にとっては、甲子園出場が至上命題となっている部分もあるが、それでも出場してからは甲子園が「通過点」に感じている節がある。何より監督の中井哲之がそうだ。 【動画】強打の東海大相模、3者連続タイムリーツーベースで広陵を圧倒! 4季連続出場の広陵が昨夏に続いて3回戦で姿を消した。序盤で試合の流れを失い、そのまま力なく強打の東海大相模の前に1対8で敗れた。 「先発した山口大樹は2点まで、高尾(響)には0点で抑えてもらって3対2、もしくは4対3をイメージしていたんですけど、思うようにはいかなかったですね。後手に回ってしまった」 試合を大きく分けたのは2回裏の広陵の攻撃だ。 1死満塁から相手のバッテリーにミスが出て1点を先制。なおも追加点のチャンスだったが、9番・山口大樹のところでスクイズを試みるも、これを山口が空振り。三塁走者はタッチアウト。山口はその後、三振に倒れてしまった。 そして、直後の3回表、山口が先頭の打者を四球で出してしまう悪い流れ。1死満塁のピンチを迎えて3番の中村龍之介に中前適時打を打たれて逆転された。 「山口がスクイズの失敗の流れのままマウンドに行って引きずってしまった」 指揮官がそう振り返った通り、山口は5回裏にピンチを作って降板。エースの高尾がマウンドに上がったが、3連続適時打で3失点、6回にも3失点を喫して試合は決してしまった。 スクイズ失敗の悪い流れからの敗戦は作戦の選択、成功率、切り替えといった部分ですべてが後手になってしまった印象だった。 広陵の中井監督は「(相手を)慌てさせたかった」とスクイズを選択した理由を話したが、その後の山口が崩れただけに、果たしてその作戦が正しかったのかという面では疑問の残る采配ではあった。 中井監督はこの流れをこう振り返る。 「野球の流れの怖さを感じたシーンではありました。でも、山口の実力はこんなもんじゃないんですよね。スクイズの失敗を引きずってしまったようになりましたけど、甲子園という大舞台で自分の力を発揮できない。それが何かを感じたんではないでしょうかね」 指揮官は勝とうと思って作戦を指示するし、選手だってうまくやりたいとは思っている。とはいえ、相手もある中で着実に遂行することは簡単ではない。作戦を失敗した時にどう乗り越えるかは、チームや個々の選手にとって成長のための試金石とも言えるだろう。 「中国大会の時と甲子園は違う。本人の力はもっとできると思うけど、甲子園で出しきれなかったっていうのは、日頃の練習の考え方であったり、性格だったりなのかなと思う。(山口は)普段は本当にのほほんとしている子なんですよね。でも、本人には『甘くなかったやろ』って言ってあげたいですね。それが分かったのはいいことじゃないですかね」
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