「夏休み明け学校に行きたがらない…」いじめ・不登校ゼロを目指す教育のプロに聞いた
◇教育漫才をしたことで生まれた予想外の効果 教育のプロである先生方も、漫才については素人。まずは、漫才作りの講習をプロの力を借りて実施。その後、子どもたちに“漫才をやる意義”を伝えたうえで、総合の時間に漫才を作る授業をおこなった。 「当時、残念なことに学校内には、いじめもありました。まずはルールとして、暴力と『死ね』『うざい』などの他人を傷つけるマイナス言葉は絶対に使わないようにしようと決めました。だから、温かい言葉をかけあうコミュニケーション大会として漫才をするよ、と。 コンビはクジ引きで決めて、誰とでも組めるようにしました。すると、子どもたちは楽しそうに漫才を作り、大会当日には活き活きと発表していました。結果、教育漫才は、新聞やテレビの取材を受けるなど注目されて。その後、赴任した別の学校でも取り入れていきました」 教育漫才を取り入れたことによる、子どもたちの変化はどうだったのだろうか。 「漫才を取り入れたことによって、子どもたちは、暴力やマイナス言葉ではなく、温かい言葉やユーモアで注目を集めたり、みんなを笑わせる楽しさに気づいたようです。いじめというのは、ある種、エネルギーの矛先になっている部分があるのですが、子どもたちのエネルギーが、漫才という形でユーモアに向かったんです。 いじめがなくなり、その影響で学校に来たくないという子どもが減りましたし、意外かと思われるかもしれませんが、学力も向上したんです」 漫才で学力アップとは、いったいどういうことなのだろうか。 「暴力やマイナス言葉なしで漫才を経験した子どもたちは、授業中に間違えた友達を冷やかしたり、笑ったりすることがなくなりました。そのおかげで、授業中に答えを間違えたり、人と違うことを言っても大丈夫だという安心感が生まれたんです。 子どもたちが自分の意見を言えるようになり、議論が活発になったりしました。安心できる環境のなかで、授業に意欲的に取り組むことができるようになったおかげで、学力アップにつながったと考えています。当時、その地区の199校中で一番になったんです。 ドリルを繰り返したり、全国学調の過去問を解いたりする学校もありますが、生きる力や、意欲は育ちません。それよりも子どもたちの関係性を温かくつなぐことです。ポイントはここです」 ◇体験活動をすることで日常と学びが結びつく 今なお深刻な問題として取り上げられている、学校でのいじめや不登校。 「日本では、2013年に『いじめ防止対策推進法』という法律ができても、『心の教育』といわれる道徳の授業が義務化されても、いじめがなくならなかったんです。それは、道徳の授業を受けても、結局は頭でわかっているだけで、日常生活と乖離しているから。だから、学びと日常を結びつけるために、体験活動が必要なんです」 コミュニケーションや伝える力を養う授業の一環として、田畑氏が取り組む教育漫才も、体験活動の一つだ。 「例えば、教育漫才では、暴力とマイナス言葉では評価されない。温かい言葉を使って笑ってもらうことで評価される、そのことに子どもたちが気づきます。学んだことが、本人の体験として実感できるんですね。もちろん、子どもですから感情的になることもあるけれど、まずいな……と思って自分で抑えることが定着してくる。これが、体験活動によって学びと日常がつながるということです」 現在は、教育コンサルトとして講演活動なども行う田畑氏。いじめ・不登校を無くすためにどうすればいいのか、その取り組みを教育現場に伝えている。 「これまで私がいた学校では、いじめ・不登校をゼロにしようという理念を先に打ち立ててきました。すると、取り組みや経営の面で配慮できるので、学校はおのずと変わっていきます。その結果、いじめ・不登校が減っていく、なくなっていく。学校とは、子どもたちが安心して通える場所でなくてはいけませんから、そういった『学校作りの理念と具体策』をこれからも広めていきたいです。 『子どもを大切にしたい』。その思いは学校も保護者も同じです。子どものことで心配があれば、なんでも学校に相談してください。自分たちは教育現場から、保護者の皆さんは家庭から、一緒に協力して、子どもを苦しめるいじめや不登校をなくしていきたいですね」 (取材:三郎丸 彩華)
NewsCrunch編集部