映画『若武者』を世界同時公開&配信開始…「New Counter Films」が切り拓く新しい邦画製作のカタチとは
世界でなら多くの人が見るかもしれない
――今回の『若武者』は、国内の劇場の他、海外の劇場で上映されていますが、その前にコギトワークスで製作した『almost people』(2023)もやはりロンドンやニューヨークの劇場で公開しています。 関: 海外の劇場は支配人もお客さんも熱量が高かったです。興味があったので来た、という感じでした。常連のお客さんは、上映が終わった後もずっとロビーで作品について語り合っていましたし、ロンドンの劇場の支配人は「来月以降も上映しよう」と言ってくれました。 お客さんの層は若い人から年配の方まで幅広く、そして、年配の方が少し多いのは日本と同じでした。ただ、やはりお客さんと劇場の近さが圧倒的に違います。 ――なぜ、海外では距離が近いのでしょうか。 関: やはり教育だと思います。子どものうちから劇場に来る習慣があり、親と一緒に来る場合は子どもは無料にしています。また、アート系の劇場は、1日、15時以降で2枠か3枠しかないので、午前中は一般の方に貸し出しています。誕生日のお祝いを劇場でやっていることもある。 そうすると、子どもたちが中学生になると「好きな女の子と一緒に映画を見に行こう」となりますよね。劇場を訪れることが日常化している。しかも地域の企業のドリンクや食べ物も劇場で販売したり、アーティストが描いた絵もロビーで売っています。 ――『若武者』の海外での反応はいかがですか。 関: ニューヨークの劇場のQ&Aコーナーでは、作品のテーマやキャラクターの描き方、そして画角(アスペクト比)など、映画の物語から技法に関するものまでレベルの高い質問がなされたことにびっくりしました。確実に作品が伝わっていると感じました。 尖った作品が日本国内でヒットするかどうかは未知数です。そして、尖った作品には出資が集まらないという傾向も残念ながらある。ただ、日本では少ない人数でも世界中にアプローチできれば、多くの人が見るかもしれない。New Counter Filmsの「カウンター」は「わかりやすさだけで動員見込みを立てる」ことに対するカウンターの意味もあります。 このレーベルは宣伝費も含めた予算規模を2500万円までと決めています。お金の規模を小さくして、日本だけではなく、海外も含めて絶対リクープするという姿勢で戦いたいと思っています。