USJ副社長「統一された世界観のテーマパーク、息苦しい」。常識覆す“日本流”で世界から集客
「我々は関西の企業」、年パスの推移は重要KPI
テーマパーク運営を左右する「入園者数」と「客単価」について、USJでは2023年度にいずれもコロナ禍前を上回り、24年度はさらに増加する見通しだ(日経新聞2024年8月24日)。 来園者は全年代で増えているが、特に顕著なのが若者の伸びだという。 加えて訪日外国人(インバウンド)客の増加も著しく、今では来園者の3~4割を外国人が占める。彼らに向けて多言語対応やプラントベースメニューを提供するなど食の多様性を推進する一方で、村山氏が重視するのが「地元・関西からの客」だ。 「僕らは関西のテーマパークで、関西にある企業なんだということは、絶対に忘れちゃいけないと思っています。 常に考えているのは、関西のリピーターのお客さまから、USJがどういう風に見られているかということ。年間パスポートの推移は、重要な指標です。 地元に愛される企業でありたいですし、最終的には関西の皆さんに『USJは私たちの企業』だと誇ってもらえるような企業になりたいんです」(村山氏) そこで力を入れているのが、地元・大阪府でのCSR活動だ。給付型奨学金の提供や、難病児のパークへの招待、そして2025年からは大阪府の児童養護施設で暮らす子どもたちへの自立支援も始める。18歳で退所した後、USJが家賃の補助をしながらパークで働いてもらうという。
激論、テーマパークに統一された世界観は必要か
USJの躍進の背景には、他国のユニバーサル・スタジオとは一線を画す日本独自の経営がある。その1つが、幅広いIPポートフォリオだろう。 近年は任天堂のキャラクターやゲームの世界を再現した「スーパー・ニンテンドー・ワールド」をはじめ、ポケモン、名探偵コナン、ONE PIECE、進撃の巨人、鬼滅の刃、チェンソーマン、SPY×FAMILY、ドラえもん、僕のヒーローアカデミアなど、日本のゲームや漫画・アニメとコラボしたアトラクションやショーなど、日本発IPの存在感が増している。 「お客さまがUSJにどんなIPを求めているのかは、(お客さまの)居住エリアによって異なります。あるエリアでは6割超が日本IPを楽しむために来園していても、別のエリアでは西洋IPのほうが人気だったり。 好まれるIPには国によって傾向がありますし、日本国内でも地域差があるんです。 なので日本のIPと西洋のIPをバランスよく展開するよう心がけています」(村山氏) 確かにパーク内を歩いてみると、ハリー・ポッターからワンピース、鬼滅の刃まで、さまざまなキャラクターのコスプレをした客がのびのびと闊歩し、楽しんでいる姿を見ることができる。 特に好きなコンテンツがなくとも、行けば何かしら馴染みがあるキャラクターに出会える場所、という見方もできるだろう。 しかし、そんなUSJの多様なIPポートフォリオは、時に「ごった煮」と評されることも。コラボするIPに対してのポリシーや、パーク全体を貫く統一感、世界観についてはどう考えているのだろうか。 「テーマパークが1つの世界観で統一されているほうが、息苦しくないでしょうか。 来園者の皆さんにはさまざまなニーズがあって、それぞれ確立されたライフスタイルをお持ちです。そこに僕たちが一方的に価値観を押し付けるようなことはしたくない。 多様なIPが共存していることを通して、『自分らしくあっていい』『あなたが生きたいように生きればいい』というメッセージを込めてきたつもりです。2021年に刷新したパークのブランド・スローガンである『NO LIMIT!』も、まさにそういう意味合いです。 USJはごちゃごちゃしているんじゃなくて、バラエティに富んでいると思っています」(村山氏)
竹下 郁子