D2C ブランドの法人ギフト戦略 ホリデー商戦を支えるも「顧客が見えない」課題
記事のポイント コーポレートギフトはD2C企業にとって大きな収益源だが、顧客データ収集が難しいという課題がある。 D2C ブランドの法人ギフト戦略 ホリデー商戦を支えるも「顧客が見えない」課題 各企業は効率化やカスタマイズ技術の導入を進め、法人顧客向けの特化したサービスを展開している。 法人顧客への依存度を高める一方、D2C顧客の獲得やブランド成長のバランスを取る戦略を模索している。 D2Cスタートアップ企業にとって、コーポレートギフトプログラムがホリデーシーズンの大きなビジネスとなっている。 たとえば、ラグジュアリーキャンドルブランド、カフタリ(Caftari)の過去1カ月のビジネスの約40%は、法人注文が占めている。ホリデーのパーティーやギフトの交換が盛況な現在、スタートアップ企業はブランドをさらに最適化する方法を模索している。 キャンドルブランドのアネクドート(Anecdote)やガーデニングスタートアップのガーデヌイティ(Gardenuity)など、コーポレートギフトプログラムを展開しているブランドは、D2C広告が高額で多くの競争があるなかで、そうした大口注文が大きな追い風になると述べている。だが、そこにはデメリットもある。特に顧客維持に関してがそうだ。一般的なオンライン注文とは異なり、商品が何百人もの見知らぬ受取人に贈られるため、顧客データの収集が難しい可能性がある。さらに、それらの顧客を見つけてブランドのデータベースに取り込むことや、将来的にリターゲティングすることも多くの場合、困難である。 こうしたスタートアップ企業によると、これらのプログラムによって年間を通じて法人顧客の獲得と維持に成功するには、いくつかの投資が必要だった。たとえば、効率的なコーポレートギフトプログラムの構築には、注文を簡単にする技術やウェブサイトのポータル、大口注文を確実に時間通り発送するための在庫管理やフルフィルメントの準備が欠かせない。
公式プログラムへの投資
Caftari ラグジュアリーキャンドルブランドのカフタリの創業者、シュレヤ・アッガーワル氏は、2023年11月にブランドをローンチしたとき、法人やB2Bの注文を事業の重要な部分にしたいと考えた。 2024年上半期、カフタリの収益の約25%はコーポレートギフトの注文から生じていた。とはいえ、特にホリデーシーズンには個人注文をターゲットにしたデジタル広告のコストが急増する可能性が高いため、アッガーワル氏は法人注文の数を増やしたいと思っていた。 「今年は我々にとって初めての本格的なホリデーシーズンなので、需要予測は手探りで行った」とアッガーワル氏は言う。同氏は今年初め、エクイノックスホテル(Equinox Hotel)やシグニア・バイ・ヒルトン(Signia by Hilton)といったスパやホテルとの提携を皮切りに、B2Bビジネスの開拓を始めた。その露出がきっかけとなり、ギフトの大口注文を求める法人顧客から大きな関心が寄せられた。 今年のホリデーシーズンに備えて、カフタリは新しいフルフィルメントセンターに移転し、新規顧客の獲得のためにギフトプラットフォームと提携した。それらのプラットフォームには、ウィッシュリスト(Wishlist)、エルフスター(Elfster)、ループ&タイ(Loop & Tie)などがあり、これによってカフタリはハローフレッシュ(Hello Fresh)など、いくつかの大企業顧客を獲得できた。 しかし、デメリットのひとつはコスト構造だ。たとえば、アッガーワル氏によると、同社のキャンドルをコーポレートギフトパッケージに含めるほかのブランドとの仕事を始めたものの、これらのブランドはカフタリのキャンドルを卸売価格で販売しているという。同様に、コーポレートギフトプラットフォームでは利益率が比較的厳しくなっている。 「たしかに我々は多くの在庫をプッシュしているが、最終的にはフルフィルメントと出荷が利益を削ってしまう」とアッガーワル氏は言う。一部のプラットフォームでは、ブランドはそのホームページに広告を出して知名度を高めることもできる。アッガーワル氏は、こうした要因から、コーポレートギフトの注文はD2Cの注文よりも卸売りのアカウントに近い性質を持っていると述べた。 利益率を改善するため、アッガーワル氏はこうした既存の関係を強化し、インバウンドのリクエストを通じて新たなB2B顧客を獲得するために活用しようとしている。また、フルフィルメントロジスティクスを改善することで、ギフトビジネスの成長に伴い、効率性がさらに高まるという。 結局のところ、アッガーワル氏いわく、最大のデメリットはブランドが最終的な顧客を所有していないことだ。ギフトプラットフォームと仕事をする場合、設計上、ブランドは顧客情報をほとんど受け取らない。「たとえば、顧客をリターゲティングし、我々の顧客ベースに加えるための顧客のeメールアドレスを我々は持っていない」と同氏は言う。「ループ&タイを通じてハロー・フレッシュと仕事をしたとしても、誰が我々の商品を手に入れたのかはわからない」。 「現在、商品を受け取った人の顧客プロファイルを逆に分析しようと試みている」とアッガーワル氏は述べた。