トヨタ スプリンタークーペ1600トレノGT(昭和49/1974年4月発売・TE47型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト085】
排ガス規制に揉まれながら生き残った2T-Gを搭載、ロングノーズ&ファストバックが印象的な一台
この連載では、昭和30年~55年(1955年~1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第85回目は、スペシャリティムード満載の、トヨタ スプリンタークーペ1600トレノGTの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より) 【写真はこちら】175/70HR13という当時としては幅広のラジアルタイヤを装着するため、トレッドも広がっている。リアのコンビネーションランプもトレノの特徴だった。(全7枚)
世界のベストセラーカーであるカローラ(KE / TE30系)&スプリンター(KE/ TE40系)がベールを脱いだのは、昭和49(1974)年4月。ボディタイプは多彩で、カローラは2ドアと4ドアのセダン、そしてスタイリッシュな2ドアHTを設定。 一方、スプリンターは4ドアセダンと2ドアのクーペを設定している。この3代目では、カローラとスプリンターの差別化が一段と明確になり、まったく異なるボディが与えられていた。ホッテストバージョンのレビンとトレノもまったく異なるシルエットに生まれ変わった。 カローラの2ドアHTをベースにした軽快なフィーリングをセールスポイントにするレビンに対し、トレノはロングノーズ&ファストバックのスペシャリティカー的な雰囲気を狙ったクーペボディを採用。ヘッドランプを後退させ、ロングノーズを強調するなど、若さがほとばしるルックスとなっているのが特徴だ。 型式名はOHVを含め、カローラの1.6L搭載車がTE37、スプリンターの1.6LがTE47で、2T-Gを積むレビンはTE37MQRG、トレノはTE47MQRG (GTはMQZG)となる。インテリアも先代モデルより格段にグレードアップされた。 レビンは8連メーターを独立させたゴージャスなT型ダッシュボードを採用。一方、トレノはメーターパネルとセンターコンソールを一体化した逆L型コンソールというスポーティなコクピットとした。 とくにトレノGTはセンタークラスターをドライバー側に振るなど、デザイン的にも新しい試みを取り入れて注目されている。ステアリングはどちらもウレタン製4本スポーク、ベンチレーションもセンターベンチレーションとなり、快適性も向上させた。 エンジンは先代モデルと同じ1588ccの2T-G型DOHCで、2種類のチューンがある。ハイオクガソリン仕様は115ps/6400rpm、14.5kgm/ 5200rpmを発生。一方で、レギュラーガソリン仕様 は110ps / 6000rpm、14.0kgm / 4800rpmと、わずかにパワーダウンされている。 キャブレターは例によってソレックス40PHHキャブが2連装された。トランスミッションは5速MTのみで3速ATの設定はない。 サスペンションは、フロントがストラット/コイル、リアがリーフスプリングによるリジッドアクスルを踏襲した。タイヤは175/70HR13ラジアルを履く。初代の27レビン/トレノはハード一点張りのジャジャ馬だったが、2代目37レビン/47トレノではホイールベースが延びたこともあって、コントロール性が大きく向上している。 2T-G型エンジンは、レギュラーガソリン仕様でもレスポンスはシャープだ。2000rpm台から太いトルクを発生し、それが6000rpmオーバーまで持続する。FRならではの奥の深い走りも楽しめる1台となった。 このレビン/トレノGTは、排出ガス規制の荒波に揉まれて、昭和50(1975)年11月にいったん惜しまれつつも姿を消す。だが、それから14カ月後にレビン/トレノの名を冠したFRライトウエイトスポーツが復活する。昭和52(1977)年1月、トヨタはカローラ/スプリンターのマイナーチェンジを行ったが、この時に再びカタログに加えられたのである。 このマイナーチェンジを機に、レビンにもスプリンターをベースにしたクーペボディが与えられ、従来のHTは廃止された。これは昭和51年1月に登場したカローラLBのフロントマスクを、スプリンタークーペの ボディに組み合わせたものだ。 また、ベーシック仕様とGTの2モデル構成となり、カローラLBにもスポーツワゴンのカローラLB1600GT (スプリンターも同様)が設定された。 エンジンは51年規制をクリアするため燃料供給を電子制御燃料噴射のEFIにした2T-GEU型DOHCだ。排出ガス規制対策を施しながら、かつての2T-GR型(レギュラー仕様)並みの性能を実現している。最高出力110ps/6000rpm、最大トルク14.5kgm /4800rpmを発生し、0→400m加速も16.5秒を可能にした。これは当時の2L車を上回る実力だ。 排出ガス規制とオイルショックによる影響で、走る楽しみが乏しかった時期に当時の若者に夢を与えてくれたのが、EFIで復活したカローラ・レビン&スプリンター・トレノだったと言っていいだろう。