「失語症の父と話したい」16歳娘の想いと挑戦…自作した“会話の支援機器”に懸けた願いとは
5年前と比べて、今はどれぐらい回復している実感があるか。咲歩さんは「自分で手すりを持って、立てるようになったのが本当に最近だ。徐々に、足がピクンと1センチ動かせるようになった。自発的に自分の口からご飯を入れることを初めてでき、車椅子生活ではあるが、手すりを持ってじぶんで立てるようになった」と答えた。 これまで周囲のサポートで支えになったことについてを「SNSでの、脳卒中で失語症になられて、頑張ってリハビリをされている方の発信。もしかしたらこの先回復する余地があるのかもしれない、私が行きたい所にも一緒に行けるかもしれないと思えた時がすごく支えになった。今度は私と父が回復していく状態であったり、こういうふうに生活するとやりやすいなど発信していけたらいいなと思っている」と語った。 また、咲歩さんは「今後、車椅子を離れて自分一人で歩けるようになったら、私の思いとしては卒業式に来てほしい。歩けるようになって、一緒に卒業式に行きたい」と続けた。
■失語症とは?
国立長寿医療研究センター、日本高次脳機能学会理事、医師の前島伸一郎氏は、失語症について「獲得された言語機能が脳損傷によって障害を受けた状態。人間の脳は、右脳と左脳がある。言語に関しては、基本的には左側が優位で、言語の中枢がある。言葉はコミュニケーションの一つの手段だが、話し言葉で伝える場合と、文字・言語で伝える場合がある。出力系で出す方は、話す、書く。入力系は聞く、読むだ。失語症は、すべてのモダリティが多かれ少なかれ障害されてしまうことを言う。このダメージの大小によっては、程度の差はあるし、いろんなタイプがある」と説明した。 突然訪れてしまう障害なのか。前島氏は「例えば交通事故、転落、脳外傷によって脳を痛めることもある。ウイルス、細菌感染によって脳炎を起こすことによって脳を痛めることも。あるいは脳腫瘍でも見られるが、最も多いのが、脳血管疾患、いわゆる脳卒中だ。ある日突然脳の血管が詰まったり、脳の血管が破れてしまうことで、脳出血を起こしてしまう。動脈瘤の破裂で、くも膜下出血も起こる。そういったことが失語症の原因として多い」と答えた。 あまり認知されていないのはなぜか。前島氏は「一つは見えにくい障害だ。言葉の障害というのはなかなか接することがない限り気づいてもらえない。それから、病名自体の認識も低いが、そういった啓発活動、メディアの取り上げ方が少ない気もする」との見方を示した。