謎多きクジラの生態解明へ、ホエールウォッチング中にみつけた「排せつ物」を国立科学博物館に提供
高知県黒潮町のNPO法人砂浜美術館が土佐湾で行うホエールウォッチングで、謎が多いクジラの生態を解明しようと、職員でガイドを務める大迫綾美さん(30)らが国立科学博物館(東京)動物研究部の田島木綿子研究主幹らの研究グループに協力。ウォッチ中に発見したクジラの排せつ物を採取して提供する「クジラのうんこプロジェクト」に取り組んでいる。(広浜隆志)
1年目の昨季は、5回採取でき、研究グループのDNA鑑定で、砂浜美術館のシンボル「クジラ館長」はニタリクジラではなく、カツオクジラであることが判明する成果も出た。22、23両日、同町入野の土佐西南大規模公園にあるふるさと総合センターで、全国の研究者らが集う「日本セトロジー研究会第34回(黒潮町)大会」で報告される。 プロジェクトは、田島さんらが取り組む国内初の調査「三宅島クジラ鼻水プロジェクト」がヒント。東京・伊豆諸島の三宅島沖では、春になるとザトウクジラが滞在し、子育てする。田島さんらはドローンを飛ばし、クジラが呼吸する際に出る「ブロー(噴気)」を採取し、含まれる細胞のDNA解析や寄生虫、細菌などを調べている。
大迫さんは、子どもの頃からクジラやイルカが好きで、土佐湾でのガイド歴10年。排せつシーンには何度も遭遇し、「鼻水が役に立つなら、うんこも役立つのでは」と、田島さんに相談。採取できた排せつ物を科学博物館に送ることになった。 クジラ類の研究では、海岸に打ち上げられた死骸を調べることが多い。田島さんは「うんこはクジラの生態を研究する上で貴重な資料。行動パターンに詳しい大迫さんらなら、多く採取してくれそう」と期待する。
大迫さんらのホエールウォッチングでのクジラの遭遇率は70~80%。排せつシーンは全く未知数だったが、昨季は5回、出会えた。 排せつ物は10分もたたずに、雲散霧消する。採取は時間との闘いだ。排せつが確認できたら、近寄って網ですくう。最初はたも網で挑戦したが、網目が粗く、プランクトンネットや女性用ストッキングを貼るなど改良した。