元年俸120円Jリーガー安彦考真とArxcs杉山代表対談後編 学生へ見せたい姿とは
元年俸120円Jリーガーで格闘家の安彦考真(46)が20年夏から届ける日刊スポーツウェブコラム「元年俸120円Jリーガー 安彦考真のリアルアンサー」では、2月から不定期で各界の代表者や挑戦者らと対談する新企画「時代を担う若者たちに伝えたい!挑戦し続けるためのマイルール」をスタート。初回の格闘技団体「RISE」伊藤隆代表、第2回のJ3のY.S.C.C横浜の吉野次郎代表取締役に続き、今回は元サッカープレーヤーでガンバ大阪ユース時代にはJ3リーグ戦出場も果たしたArxcs・杉山天真(すぎやま・たかまさ)代表(25)が登場です。後編では2人が協働して行った体育会学生向けイベントの話などについて対談しました。【取材・構成=松尾幸之介】 安彦 僕は昨年末にSrxcsさんが行った体育会学生向けイベント「VISION SUMMIT」内で実施した学生の自己PR大会「VISION PITCH」の発起人とアンバサダーも務めさせていただきました。体育会学生が自分の魅力などを3分間でプレゼンし、就職活動への活用や、自己理解を深めることを狙うものです。話を聞いてめちゃくちゃ面白いなと思いましたし、場所も渋谷ストリームのホールを押さえて、資金もちゃんと集まっていて、良いイベントでした。 杉山 学生さんは口には出さないけど、将来に不安を持っている人も多くいます。そこにはロールモデルの存在が圧倒的に足りないと思ったんです。今回、ゲストで来ていただいた経営者らの方もいましたが、最初は人脈0の状態だったんです。 安彦 イベントでは経営者の方のお話を聞くパートもあったりしましたね。いろんな大人に関わってもらうということもやったと。杉山さんを見ていてすごいなと思うのは、今回もそうですけど、チャレンジへの恐怖心がない。そしてその根拠のない自信のようなものをしっかりと形にしてきている。今回のゲストの方にもコンセプトや学生への思いが響いたんだと思います。トータルとしてすごくいいマッチ立ったなと思います。 杉山 参加したそれぞれの方から「よかった」と言っていただけました。今回は学生イベントですけど、 参加者にはお金を払っていただいているんです。なので、「学生の目の色が違った」と言ってくださる方もいらっしゃいましたね。 安彦 学生にとっては部活ではないところでのああいう緊張感はすごく良かったんじゃないでしょうか。 杉山 確かに登壇した子にはすごくいい経験をしたと逆に感謝されましすし、あれから時間もたって、また一皮も二皮もむけて成長しています。経営者の方のの話も参考になったと思いますけど、そんな中でも意外と一番印象に残っているのは学生の発表だったりするんですよね。 安彦 そこがうまいですよね。やっぱりリアリティーなんですよ。学生が自分のことのように感じて、そこにエネルギーを感じたり、影響もされて。自分もやりたいとかって思うんだよね。ああいう場を作りたいと言うのは簡単、でもやるのは大変ですよ。とてもいい会でしたね。ぜひ「VISION PITCH」も大きくなっていってほしいですね。ちなみに僕たちが出会った時の話も聞きたいです。僕のことはもともと知っていたんですか。 杉山 自分もサッカーをしていたので、存在は認識はさせていただいていました。当時は学生でまだプロを目指していた時で、「こういうプロへのなり方もあるんだ」と思っていましたね。初めて安彦さんとお話しした時もエネルギーがあるし、言葉に重みを感じました。ハングリー精神もすごくて、負けていられないなと思わせてくださった方でした。 安彦 当時は自分にも賛否両論の声がたくさんきていた時でしたね。いろんな見方の人がいる中で、届く人には届いているかなという気はするので、良かったなと思います。そういう意味ではセンセーションな出会いだったかもしれないですね。日刊スポーツに最初にインタビューしていただいた時は2日間Yahoo!のトップに載り続けてコメント欄の書き込みがひどくてひどくて…(笑い)。こういう感じで炎上するんだなと思ったくらいでした。みなさんに知っていただける大きなきっかけでもありましたけどね。僕は杉山さんと初めて話した時は、なんて落ち着いている24歳なんだと思いました。なぜなんだろうと思ったら、もうすでにその時、学生の未来を抱えた社長さんだということで。 杉山 僕はガンバ大阪ユースから関西学院大のサッカー部へと進んで、卒業してすぐにFC淡路島のゼネラルマネジャーに就任しているんです。そうした経歴が当時はキャッチーに感じられたのかもしれないですね。 安彦 プロの試合にも出たことがあるし、ガンバユースの時は堂安律選手らが同級生で、監督が宮本恒靖さんですよね。今のサッカー協会会長ですよ。僕のような立ち位置の人間だと学生にはやっぱりリアリティーがないのかなと。でも杉山さんみたいに年齢も近くて先輩みたいな方が組織を動かしている姿が学生に良い影響を与えるような気がしますね。 杉山 今は僕も年齢を重ねていく危機感を感じています。なので、今いるより若い子たちが次のチャレンジをしてくれないと成り立たないなとも思っていますね。 安彦 僕の周りでは40歳あたりの人でも格闘家なりたいと言う人が増えてきているんです。リスク管理などで心がけていることはありますか。 杉山 僕にとっては大学時代の約200人の部員の中の主将を務めた経験が生きていますね。これは会社組織でも同じかもしれませんが、大事なビジョンや文化はトップがしっかり示すということは常に意識していて、あとは自由です。 安彦 なるほど。主将だった時とそうでない時はやっぱり違うもんですか。 杉山 違いますね。大学1年生の時は組織のことなんて何も考えていないんですよ。役割や立ち回りだったり、周囲に求められてくる中で変わっていきましたね。 ◆杉山天真(すぎやま・たかまさ)1998年(平10)6月26日、奈良県出身。ガンバ大阪ユース時代の16年にJ3リーグ戦に出場。関西学院大サッカー部へ進み、主将も務める。21年にFC淡路島のゼネラルマネジャー就任。24歳だった22年にArxcsを創業。大学スポーツに励む人材らへ向けたイベント実施やコムニティー形成などを行っている。 ◆安彦考真(あびこ・たかまさ)1978年(昭53)2月1日、神奈川県生まれ。高校3年時に単身ブラジルへ渡り、19歳で地元クラブとプロ契約を結んだが開幕直前のけがもあり、帰国。03年に引退するも17年夏に39歳で再びプロ入りを志し、18年3月に練習生を経てJ2水戸と40歳でプロ契約。出場機会を得られず19年にJ3YS横浜に移籍。同年開幕戦の鳥取戦に41歳1カ月9日で途中出場し、ジーコの持つJリーグ最年長初出場記録(40歳2カ月13日)を更新。20年限りで現役を引退し、格闘家転向を表明。22年2月16日にRISEでプロデビュー。プロ通算2勝1分け2敗。身長175センチ。