グラフィックデザイナー・八木幣二郎 新作個展で考えた「デザイナーの責任」と「未来に対してすべきこと」
――「ggg」の従来の展示といえば、過去の代表的な制作物の展示に加えて新作の展示を発表するイメージですが、今回は1階から従来の展示形式から逸脱していますね。「架空の企業を作る」というのは、一見大喜利的にも見えますが、どのような想いがあったのでしょうか?
八木:展示コンセプトが決まってからというもの、ずっと「デザインの力」について考えていました。小谷充さんの著書の「映画のなかのロゴマーク 視覚言語と物語の構造」 に書いてあるような、映画――「モンスターズ・インク」「七人の侍」「20世紀少年」などの中でどのようにデザインが登場人物に作用しているか考えていて。同時に、もし社会や人を動かす力がグラフィックデザインにあるとしたら、3DCGを用いた自分のグラフィックデザインは今の国内のグラフィックシーンの文脈において、どこに属していてどのように扱われていくんだろう……と漠然とした不安も感じていました。
――八木さんから見る、今の国内のグラフィックシーンの文脈というのは?
八木:よく他の分野の友達に「グラフィックデザインとは」と聞かれたときに、自分なりに考えるざっくりとした3軸の分け方があります。もちろん、それぞれのデザイナーは、いくつもの文脈を踏まえた上で実践に及んでおられるのだと思いますが、まず一つの軸が、中島英樹さん、秋山伸さん、田中義久さんなど物質的なものに多様なアプローチを仕掛ける方々、二つ目の軸が工芸的な手法で文字や文様を扱う佐々木俊さん、小林一毅さん、鈴木哲生さんなど、三つ目が工作舎の系譜で、図形的に文化史的な背景を取り込むことに巧みな杉浦康平さん、羽良多平吉さん、戸田ツトムさんというふうに分類できるんじゃないかなと考えています。そのように分けると、どうも自分のグラフィックデザインはいずれの延長線上にもないように感じていて。
――八木さんと言ったら、3DCGを使って独自の道を歩んでいる印象があったので、これまでの話は意外ですね。