欧州のCMBS投資家、「トリプルA」で信用収縮以来の損失発生か
(ブルームバーグ): 英国のショッピングモールを裏付けとするローンを証券化した商業用不動産ローン担保証券(CMBS)のうち、最も安全とされる部分の投資家が損失に直面し、世界的な金融危機以降で初のケースとなる恐れがある。バンク・オブ・アメリカ(BofA)傘下メリルリンチ・インターナショナルのアナリストらが明らかにした。
メリルのストラクチャードファイナンス・リサーチのアナリスト、マーク・ニコル氏らは「エリザベス・ファイナンス2018」の「クラスA」トランシェ保有者について、原資産の不動産売却で回収が予想される金額に基づき、投資損失を被る可能性があると評価する。
米国では先月、CMBSの「AAA」格付け部分への投資で損失が発生しており、欧州で予想される損失はそれに続くものだ。マンハッタンのミッドタウン物件をローンが裏付けとするCMBSのうち、AAA部分の保有者が回収できた資金は、当初投資額の75%に届かなかった。
バークレイズによれば、CMBSの最も安全とされる部分で損失が生じたのは、世界的な金融危機の信用収縮局面以来となる。
2020年から不履行状態となっている英ローン債権のスペシャルサービサー(債権回収業者)は、イングランド東部キングズリンと同中部ラフバラ、スコットランド東部ダンファームリンのショッピングセンターについて、3150万ポンド(約63億3000万円)の売却収入をもたらす購入申し込みを受け入れたと今週発表した。BofAによると、「クラスA」トランシェのローン債権残高は3360万ポンドだった。
モーニングスターDBRSは今年4月の段階で、ローンの裏付けとなる三つの商業施設(マルーンプロパティーズ)の価値を5040万ポンドと評価し、ローン資産価値比率(LTV)を125%としたが、「厳しい市場環境を背景に売却プロセスの結果には不確実性が存在する」と指摘していた。
BofAは「マルーンの不動産価値の下落は著しい。当初AAAに格付けされていたCMBSに損失が出るのは、われわれが知る限り、欧州金融危機以来で初めてだろう」と19日の顧客向けリポートで説明した。