山本益博のラーメン革命! カリスマ製麺師・不死鳥カラスさんを訪ねて、麺について考えた
日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。 山本益博のラーメン革命!
先日、TBSで「発表! 神の舌が選んだガチランキング! ラーメン番付SHOW」がオンエアされた。「ソムリエ12人が日本中食べ歩きトップ30発表」という2時間の特番。このラーメン番組の売りは、味覚嗅覚の訓練が行き届いたソムリエが選ぶ点にある。全国のラーメンの名店の中からソムリエ協会の全国支部の支部長さんらが30軒を選び抜き、それを日本ソムリエ協会の会長であり、1995年世界最優秀ソムリエコンクールで世界一に輝いた田崎真也さんが食べ歩くというもの。 お供は、TVチャンピオンでラーメン王に輝いた経歴を持つ石神秀幸さんで、行く先々で、一緒に目の前のラーメンを論評する。この時の田崎さんのコメントが素晴らしかった。さすが、ワインの香りを日常的に分析しているだけあって、スープや元ダレの食材をことごとく推理しながら当ててしまうのだ。どのラーメン店主もその驚きを隠せなかった。番組のタイトルに「神の舌」と出ていたが、嘘偽りのない「舌」の神業を見せていただいた。 だが、物足りなかったのは、石神さんのコメントである。田崎さん同様のスープについてのコメントはあったが、麺についてのコメントはほとんどと言ってよいほど聞かれなかった。田崎さんのスープ評に石神さんの麺評が添えられていれば、選ばれたラーメンは一層輝きを増したに違いなく、残念だった。
かつてラーメンの鬼と呼ばれた佐野実は「らぁ麵とは、麺は男。スープは女。俺はこの言葉を掲げて日々らぁ麺と向き合っている」と言っていた。つまり、ラーメンの麺とスープは一対で対等の価値と考えていたのだろう。 ほとんどの人が、目の前にラーメンが運ばれてくると、スープを一口含んでから、やおら麺をたくし上げて啜る。そうして、スープと麺の相性、絡み具合を楽しみながら、具をアクセントとして間に挟んで、ラーメンを平らげてゆく。 そこで、私も改めて「麺」について考えてみようと、「麺」作りのスペシャリスト不死鳥カラスさんをお訪ねした。カラスさんが「麺」作りに励んでいるのは、台東区元浅草にある「開化楼」で、ラーメンファンなら、あちこちのラーメン屋さんで「開化楼」の名がプリントされた麵箱を見かけたことがあるに違いない。