山本益博のラーメン革命! カリスマ製麺師・不死鳥カラスさんを訪ねて、麺について考えた
カラスさんにまず伺ったのは、「私が子供のころ、中華そばと言っていたラーメンの麺は、どこでも縮れていました。それが、今では、ほとんどがストレート麺です。それはなぜでしょうか?」 カラスさんの答えは「いまどこでも麺をきれいに揃えて、どんぶりの中に流しますよね。その影響があるんじゃないでしょうか」だった。盛り付けもヴィジュアルが大切で、ラーメンもデザインの時代に入ったということなのだろう、私はなるほどと頷いてしまった。
2問目は「そのストレート麺は、かなり長めのものも出てきていますけど」と投げかけると、「お店からの注文で、長さを指定してきたのは『八五』が最初でした。なにか理由があってのことでしょうね」。 実をいうと、私は長い麺を啜るのは苦手で、カッコよく食べることがむずかしい。YouTubeで、啜る途中で麺をカットするシーンを見た視聴者から「見苦しい」と言われたことがある。 3問目「麺の原料である小麦ですが、実は国産の小麦を使うようになったのは最近のこととのことですが?」 「そうなんです。以前は国産の小麦だと色味が若干くすみが出たりして、美味しそうに見えなかった、ということもあったと思います。今では、全国の小麦がラーメンの麺になっています」
そのカラスさんが私を案内してくださったのが、つくばの「中華そばひしお」だった。実は昨年12月に続いての2度目の訪問。1度目の「塩」が忘れられず、今一度、出かけた。 目の前に運ばれたどんぶりを眺めると、前回となにかヴィジュアルが違う。店主の細田さんいわく「前回、宿題をいただきましたので、具は同じなんですが、バランスを少し変えてみました」。こういう真摯な姿勢が素晴らしい。
いただくと、スープも麺も品格が漂っていて、しかも、具が目立ちすぎず、以前よりスープと麺の存在感を高めている。改めて絶賛すると、「とてもうれしいですが、今回も課題をいただきたいです」と、褒めるだけでは、店を後にはさせてくれなかった。 わずかな宿題を出し、またまた、出かけなきゃいけない羽目になってしまった。焚き付けた現場を確かめに行くというわけで、これを「味の放火魔」という。