SANAAの大屋根、安藤忠雄による文化装置、緑溢れる公園…〈グラングリーン大阪〉の魅力を探る。
南北に約120mもの長さを持つ大屋根は、緩やかな起伏で3つのスペースをつなぐ。屋外型屋根付きイベントスペース〈ロートハートスクエアうめきた〉は芝生広場へと広がり、まちの賑わいを創出する大規模なイベントも可能となる。まちや公園の情報発信・案内施設として「エシカルテインメント(エシカルとエンターテインメントを組み合わせた造語)」をコンセプトに、豊かに楽しく過ごすためのヒントを提案するインフォメーション棟〈PLAT UMEKITA〉。オーガニック食材や有機野菜を使った身体が喜ぶメニューが楽しめるカフェ〈TALKS cafe & bar〉。人々は繋がる大屋根に誘われ、行き交うことでまち全体を体感する仕掛けでもあるのだ。
大屋根の設計を手掛けたのはSANAA。「芝生広場や森、池、滝といった公園のランドスケープに呼応するように、駅と公園の間を人々が自由に行き来できる屋根下空間をつくりました。全体に軒が出ていて、どの方向にも開かれた立面という構造。敷地内や周りのビルなど、あらゆるところから眺めることができます。大阪駅前という立地に目的がなくてもやってくることができて、思い思いに過ごせる場所が生まれたのは大きな価値のあること。これから100年200年経ったときに何かの歴史の始まりだったと思われるような、ある種の名勝のような存在になっていればいいなと思います」と公園の未来へも想いを馳せてSANAAはコメントを寄せている。
〈うめきた公園〉はサウスパークとノースパークのふたつの公園を持つ都市型パブリックスペース。ランドスケープデザインは、アメリカ・シアトルを拠点に活躍するランドスケープ建築集団〈GGN〉が手掛けた。そのクリエイティビティの根幹にあるのはオーセンティシティ、本物であることだという。ここ大阪ではどんなことを意識したのか。 「まずは大阪の街の成り立ちや、商人文化、淀川の変遷などを古地図や書物を調べることから始めました。日建設計と協働し周辺の植栽の特徴や、低地の森や淀川沿いらしい植生を重要な “うめきた” らしさとしてデザインに取り入れたり、在来種や文化的に重要な種を植えたり。加えて日本庭園や周囲の山々も参考に、多種多様な葉のテクスチャや、色づく葉がレイヤーで入り交じる美しさをどう反映させるかなども意識しました」と〈GGN〉Principalの鈴木マキエさんはいう。