愛する孫へ「毎年110万円」の贈与を続けた70代夫婦だったが…孫の身に起きた「まさかの事態」【司法書士が解説】
祖父母たちによる生前贈与の「2つの問題点」
では、この事例のいったいなにが問題だったのでしょうか。 それは、「『定期贈与』であるとみなされた」という点と、「110万円は、“あげる人(=贈与者)”の枠ではなく“もらう人(=受贈者)”の枠である」という点です。 1.「定期贈与」であるとみなされた 「定期贈与」とは、毎年同じ相手から、決まった時期に決まった額を贈与されることをいいます。たとえば、毎年コツコツ100万円を10年間贈与したとしても、税務署に「あらかじめ1,000万円を贈与するつもりであった」と判断されてしまうと、定期贈与とみなされ課税の対象となります。 智さんの場合も、佐々木夫妻から毎年「誕生日」という同じ日に110万円ずつ、定額で贈与を受けていました。さらに、この贈与の仕方が10年間続いたため、合計して1,100万円が「定期贈与」とみなされ、贈与税を納税する義務が発生したのです。 2.110万円は、“あげる人(=贈与者)”の枠ではなく“もらう人(=受贈者)”の枠 もうひとつの落とし穴は、受贈者の「勘違い」です。「110万円」というのは財産をあげる人(=贈与者)の枠であると勘違いされやすいのですが、実際にはもらう人(=受贈者)にとっての枠です。 贈与者としては、たとえば同じ年に110万円を5人に贈与しても課税の対象とはなりません。しかし、受贈者は、年間110万円までが非課税枠であり、それを超える金額になると課税の対象となります。 智さんの場合、ある年から、佐々木夫妻から110万円、中野夫妻からも110万円の贈与を受けることとなったため、受贈額が合計220万円となりました。このうちの110万円は非課税枠ですが、残りの110万円に対しては贈与税を支払わなければなりません。
生前贈与は「不定期に不定額」を
では、このような問題を回避して、暦年贈与を有効に活用するにはどうすればいいのでしょうか。 まず、一定の時期に一定の額を贈与することは避けるべきです。不定期に不定額の贈与をし、証拠として「贈与契約書」を作成しておくと安心です。 また、“あえてある年は120万円贈与して、1万円の贈与税を支払う”など、贈与税の申告を贈与の証拠とするという対策方法もあります。 そして、もっとも肝心なのは、贈与者だけでなく、受贈者である本人も自分がいくらの贈与を受けいくら申告しなければならないのかを手帳に記すなどして、双方が生前贈与の内容についてきっちり把握しておくことです。 ◆まとめ このように、「110万円の贈与なら税金がかからない」からといって、正確な知識をもとに贈与を行わなければ、のちに高額な贈与税を納税しなければならないなど、大変な事態となってしまうことも少なくありません。 したがって、生前贈与を行う際は専門家に相談のうえ、計画を立てて暦年贈与を行うことをおすすめします。 <<<【司法書士が解説】暦年贈与の落とし穴>>> 加陽 麻里布 司法書士法人永田町事務所 代表司法書士
加陽 麻里布
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