爆風スランプインタビュー「“IKIGAI”があれば楽しく生きていけるよって、希望を持ってもらえるんじゃないかなと感じました」
――「IKIGAI」はまさに“生きがい”がテーマになっている曲ですが、これは中野くんの中で大きなものとしてあったんですか? 中野 20何年前から健康に目覚めまして、日々健康ネタを漁っているわけですけど、その中でNetflixのドキュメンタリーに、世界中の100歳以上の人たちが集まっている場所……「ブルーゾーン」(イタリア・サルディーニャ島、日本・沖縄、アメリカ・カリフォルニア州ロマリンダ、コスタリカ・ニコジャ半島、ギリシャ・イカリア半島の5カ所)というのがあると海外の研究者が提唱して、その地域を研究しようっていうドキュメンタリーがあるんですよ。で、その研究者が沖縄に行っていろいろと調べたところ、「もちろん食べ物や自然環境もいいけど、ここの人たちは生活をしている中で、人の役に立つとか仲間同士助け合うとか、精神的な面で“生きがい”というものを手にしていて、それで長生きすることに絶望を持っていない。つまり“生きがい”というのは、人間がより健康的に長く生きていくためには重要なのではないか」って言っているんです。そこから、生きがいが“IKIGAI”として世界中に広まって行ったんです。KAWAIIとかMOTTAINAIとかと同じように。 そのことを知って、バブル崩壊以降日本人は“IKIGAI”を持つことを忘れていたんじゃないかな?とふと思ったんです。老後は2000万円持ってないと暮らしていけないとか、何もかもがお金に換算されて考えられる世の中になったんですけど、お金ももちろん大事だけど、“IKIGAI”も必要だよなと。それで、現代の日本に暮らす、特に中高年のみなさんに向けて“IKIGAI”という言葉は響くんじゃないかと思ったんです。“IKIGAI”があれば楽しく生きていけるよって、希望を持ってもらえるんじゃないかなと感じました。 ――最近は“推し”という言葉がよく使われますけど、それよりももっと自分自身に深く根ざした言葉だと思います、“IKIGAI”というのは。 中野 そうですね。“IKIGAI”という言葉が本当に国際的な共通語になっているという事実を末吉さんがイギリスのブライトンで発見したので、ここからは末吉さんどうぞ。 末吉 ブライトンの街を歩いていたら、「IKIGAI CAFE」というのがありまして。ちょうどこの曲を作っている時に発見したんです。それで、日本人が経営しているのかなと思ってお店に入って聞いてみたら、香港人のオーナーさんだったんです。「なんでこんな店名にしたんですか?」って聞いたら、「沖縄の友人からこの言葉を教わって、すてきな言葉だなって思って店の名前にしました」って。コーヒーとパンが売りなんだけど、「コーヒーとパンは僕の“IKIGAI”です」って言うんだよね。で、本当にそのお店のコーヒーとパンがおいしくて感激しちゃって、さらに自分達が今作っている曲とも繋がって、ちょっと泣けてきたんですよ。 中野 本当に神様がいたみたいな。 末吉 ほんとほんと。 ――当然みなさんの“IKIGAI”は、音楽をやることだと思うのですが、その中身は若い頃と比べたら変わっている部分もあると思うんです。例えば若い頃は、モテたいとか成功したいとか目立ちたいというようなことが優先的にあったかもしれない。そこで、今みなさんが音楽をやる上での“IKIGAI”は何ですか? ということを聞きたいです。 中野 私は、やっぱりコロナが大きかったと思うんですけど、コロナの最中は音楽的なものがストップして、それがいつ明けるか分からなかったから、ずっと歌えないんじゃないかっていう恐怖と、あと歌わなかったことによって声が出なくなっていくんじゃないかって思ってたんですけど、コロナが明けて歌えるようになると、あらためて歌い続けることが“IKIGAI”になりましたね。年齢的なものもありますしね。 末吉 中野からこの言葉を聞いて、調べたんですよ。“IKIGAI”で検索すると、ある図表が出てくるんです。4つの円が交錯した真ん中が“IKIGAI”で、その4つの円は「自分の好きなこと」「社会から必要とされていること」「自分の得意なこと」「自分が収入を得られるもの」、この中心にあるものが“IKIGAI”なんだと。それに合わせて自分のことを考えてみると、まさに4つの円の真ん中にあるものが音楽しかないんですよね。そうか音楽は自分の“IKIGAI”だったんだって気づけた。 中野 へー。