「食と農と健康」軸の茨城・常総の街づくり着々 活況の道の駅は「平成の大合併」象徴に 深層リポート
茨城県常総市の「道の駅常総」近くに11月、関東最大級のサウナを備えた温浴施設がオープンした。同市が産業振興、水害からの復興などに向けて「食と農と健康」を軸に進める街づくりプロジェクト「アグリサイエンスバレー常総」の集客施設がほぼ出そろった。中核である道の駅は県内外の来場者でにぎわい、温浴施設との相乗効果が期待される。その活況ぶりは、「平成の大合併」で誕生した市の新しいシンボルとして市民が誇りを持つ効果も出ている。 【写真】道の駅常総で人気ナンバーワンのメロンパン ■ギネス記録の名物 さいたま市の会社員の女性(25)は温浴施設「常総ONSEN&SAUNAお湯むすび」を出ると道の駅に向かった。お目当ては道の駅で人気のメロンパンだったが、「また売り切れなの」とがくぜんとした表情をみせた。市アグリサイエンスバレー推進室の小川護室長は「メロンパンは5~6種類あるが、『早くから並ばないと買えない』と苦情もある」と少し申し訳なさそうに話す。 実はメロンは茨城県が生産量日本一だ。この道の駅では今年5月、「8時間で最も多く売れた焼きたて菓子パンの数」でギネス記録に挑戦し、9390個の新記録を打ち立て話題となった。 小川室長は「(茨城が)生産量全国2位のサツマイモで作る芋けんぴとともに、メロンパンを買うためのリピーターも多い」と話す。このほか、地元産野菜や茨城沖で取れた魚なども扱っており、いずれも人気が高い。 ■社会実験も後押し 常総市は農業振興、人口減少対策、平成27年9月に鬼怒川が氾濫(はんらん)した常総水害からの復興などのためにアグリサイエンスバレー常総のプロジェクトを打ち出した。地元の農水産品をアピールする道の駅は拠点と位置付けられ、令和5年4月28日に開業。当初は年間100万人の来場者を予想していたが、1年目は200万人を超えて関係者を驚かせた。 周辺には、イチゴ農園やカフェ併設型の書店もあり、複数の施設を訪れる人も多い。来場者の車のナンバーは東京や近県も目立ち、地元住民だけでなく観光客に親しまれていることが分かる。 首都圏中央連絡自動車道(圏央道)常総インターチェンジ(IC)に近いことや、圏央道にドライバーが休憩できるパーキングエリアが少ないことも追い風だ。次世代型自動料金収受システム(ETC2・0)対応車が常総ICを降りて来場する場合、条件を満たせば追加料金なしで圏央道に戻れる社会実験も、来場者増につながっている。
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