「食と農と健康」軸の茨城・常総の街づくり着々 活況の道の駅は「平成の大合併」象徴に 深層リポート
■全国から視察
常総市は平成18年、旧水海道市と旧石下町が合併して誕生した。平成の大合併で誕生した自治体のなかには旧市町村の〝壁〟で一体感に欠けるところもあるとされる。常総市は南北に細長いことも重なって、市民が市になじめない面もあった。その市のほぼ真ん中に道の駅ができ、テレビや雑誌などがこぞって取り上げた。
農家の男性(65)は「これまで県外の人に常総市といっても知らない人が多かったが、今では『あの道の駅があるところね』と納得してくれる。道の駅は旧水海道や旧石下のものでなく、新市の一体感の象徴だ」と話す。
神達岳志市長は「道の駅常総は成功例として全国から視察が相次いでいる。日本一の道の駅だ」と胸を張り、「今後は(来場者に)広域に回遊してもらうため、周辺市や県、圏央道の沿線自治体と連携を進めたい」と話す。
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■アグリサイエンスバレー常総
圏央道常総IC周辺の約45ヘクタールで「食と農と健康」をテーマにした街づくりのプロジェクト。常総市と戸田建設が「官民連携」で取り組んでいる。道の駅や大型書店、イチゴ農園、温浴施設など集客施設のほか、国内最大級のミニトマト農場、ロボットを使う葉物野菜の植物工場、物流施設などが整備されている。
記者の独り言
平成27年に発生した常総水害はひどかった。当時、水田地帯だった現在の道の駅周辺も完全に水没した。水害をきっかけに農業を辞める人が出て、耕作放棄地になることも懸念されたが、高齢男性が水没した水田を見て、「常総は負けない」とつぶやいていたことを覚えている。この言葉は市内のあちこちで聞き、復興に向けた合言葉のように思えた。現在、道の駅の混雑を見る度、その言葉を思い出して感慨深い。(篠崎理)
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