ポリウレタンを炭酸水で簡単リサイクル 環境負荷の大幅な低減可能に、長崎大
研究を始めたものの、日本ではゴミの回収は自治体に任されているため、ポリウレタンを効率的に集めるためには大学で研究が完結できず、自治体や企業の協力が不可欠だった。ポリウレタン製品を製造している化学メーカーのアーケム(東京都港区)と組み、産学連携によるリサイクルシステム確立に取り組んだ。
まず、回収されたポリウレタン製品を粉砕する。粉末状のポリウレタンに、水にセ氏230度、超臨界圧力以下の6.9メガパスカル(約70気圧)以上の圧力をかけて炭酸水にしたものを混ぜ合わせると、約30分で元の形状が壊れ、ポリオールとイソシアネートの原料であるアミンができる。また、この一連の反応で使用した水とCO2は再利用できると考えられる。 本九町助教は「溶媒にも溶けにくいポリウレタンは劇薬でしか加工できないと考えられていたので、逆転の発想をしてみた」のだという。回収率は9割を超えた。
高い純度 再利用もできるポリウレタン精製
今年3月、ポリウレタンを分解して得られたポリオールが再度ポリウレタン製品を生成できる品質を満たしていることも確認できた。今後は自治体に委ねられている家庭ゴミのポリウレタンを回収するにはどのような方法が考えられるか、より多くの企業と連携する予定だ。
本九町助教は「産業廃棄物だけでなく、マットレスなど家庭からも大きな体積で出るポリウレタンをリサイクルできる仕組みができれば、ゴミ全体の量をかなり減らせるのではないか」と話す。ゴミ処理費用にかかる税金は年々増加している。住民の課税負担だけでなく、環境への負担を減らすためにも、この研究が泡のように膨らみ、私たちの暮らしが豊かになることに期待したい。 (滝山展代/サイエンスポータル編集部)