適正価格学ぶ「長商デパート」 節目の100回目 生徒が仕入れ・販売、農作物も
長野県長野商業高校(長野市)の生徒が毎年運営する模擬株式会社「長商デパート」が、今秋で100回目を迎えた。仕入れから販売、接客まで全て生徒が担当する。節目の年に直面したのは「農産物を適正な価格で売ることの難しさ」だ。今年は、先輩から受け継いできた生産者から入手ができず、新たな取引先探しに奔走。利益を出すことが求められる中、交渉で実感した農業の大変さから値決めに揺らぎながらも、安易な安売りはせず味や産地をPRしながら売り切った。 長商デパートは3日間で1万8000人が来場した。農産物コーナーの目玉商品はブドウ「シャインマスカット」と、リンゴ「秋映」「シナノゴールド」「シナノスイート」。 これまでは毎年、リンゴで依頼している県内の同じ生産者から直接仕入れをしてきた。だが、今年は農産物販売主任の廣田奈緒さん(17)に、その生産者から「人手不足で出荷が難しい」との相談があった。 廣田さんら農産物コーナーのメンバーは校内の生徒らに連絡して、新たな生産者を確保。園地にも足を運び、品質や味、出荷できる品種などを確認した。 廣田さんは生産者と話す中で、気象や資材高騰など農業の厳しさを実感。「農家の苦労に見合った適正な価格で販売を目指そう」と決意した。販売員となるメンバーには「産地や味など値段以外の良さを伝えて売るのが、販売員の腕の見せどころだ」と呼びかけた。
〝社長〟も生徒 会社経営学ぶ
一方で、長商デパートは「実習販売」の場であり、利益を出すことも要求される。仕入れ値や価格設定には苦労した。 オープン当日はリンゴは各品種1袋(3個入り)250円、「シャインマスカット」は1房1000円で販売。開始直後からにぎわった。 副主任の青柳優里さん(18)は「シャインマスカット」の試食品を「甘さや粒の大きさを確かめてください」とPRしながら、販売した。「適正価格で売るには、販売員が正しい知識を持つことが重要」と強調。「農産物の特徴や“売り”を真剣に調べた。売り切れて良かった」と、ほっとした表情で話した。 同デパートは1916年に始めた「全国名産品実習販売」が出発点。51年に「新しい商業教育の在り方」という視点で改善され、会社経営を学ぶ現在の模擬株式会社「長商デパート」を設立。社長や役員も生徒が務める。 今年は農産物の他、鮮魚や園芸、物産品、飲食など18コーナーを出展。農産物コーナーは3日間でブドウ90房、リンゴ18ケース、ハクサイ115ケースなど、トラック3台と軽トラック2台分を販売した。 (岩下響)
日本農業新聞