雨のスーパーフォーミュラSUGO戦でなぜアクシデントが多発したのか。複合的要因の考察とタイヤメーカー横浜ゴムに聞く今後の対応
■なぜ最終コーナーばかり?
そして、なぜ最終コーナーばかりアクシデントが続いたのかに関しても気になるところ。当然最終コーナーはSUGOの中でも特にタイヤへの負荷がかかる区間であるため、上記のようなウォームアップ不足によりタイヤが十分に作動していない状況下でグリップを得られずスピンした……ということも考えられる。一方で、当該区間の路面コンディションも一因になっていたのではと指摘する声もある。 スーパーフォーミュラのオフィシャルアドバイザーである土屋武士氏は、シリーズ公式サイトに寄稿したコラムの中で、レース後実際に最終コーナーに出向いたと明かし、大嶋らがコントロールを失ったコーナーアウト側のラインが「歩いていてもハッキリと滑りやすいことが分かる状況でした」と綴っている。 そこは、前日までのドライ路面で各車が走行し、タイヤのゴム(ラバー)が付着した箇所。本来であればラバーがのっている箇所はグリップしやすいのだが、ウエットコンディションになったことで、そこが逆に滑りやすくなってしまったのではないか……というのが土屋氏の見立てだ。 またSFgoのオンボード映像を見ても、最終コーナー付近は標高の低さが幸いして霧による影響をあまり受けなかったと考えられる上、先行車のウォータースクリーンで前方視界が遮られるホームストレートと違い、最終コーナーはその形状も相まって水煙でその先が見えないということもなかったと思われる。ある意味“踏んでいける”状況にあったというのも、同じ箇所でアクシデントが続いた一因ではと指摘する声もある。
■タイヤは今季いっぱい旧スペックを使用か
「SUGOの決勝は、非常に難しいコンディションであったと客観的に感じています」とレースを総括する横浜ゴムの斉藤部長。「それを難しくないようにするためのタイヤのレベルアップを進めていきたいです。改良、開発のレベルアップは常に進めているものではありますが、改良の加速をして、より良いタイヤをより早いタイミングで提供できればと思っています」と語った。 SUGO戦で使われた新スペックのタイヤは、サステナブル素材の比率が高められている点が従来型と異なるが、斉藤部長によると「再生可能原料を増やしたからといって、耐久性が悪くなるだとか、ウエット性能が悪くなるかと言われると、必ずしもそうではありません」とのこと。今後はサーキット、プロモーター、チーム、ドライバーの協力を得つつ、ウエットタイヤの確認作業を確実に進めていきたいとした。そのため、少なくとも今季中は旧スペックのウエットタイヤが使用される予定のようだ。 「散水でのテストももちろんやりますが、例えば(公式)テストで雨が降った際に、全チームに協力いただけるのであれば、テストスペックなどを全車に平等に提供してフィードバックをいただく機会があれば、我々としても嬉しいです」 「『3スペックを乗り比べてください』とまで負担をかけるつもりはありません。ただ、その(テストする)タイヤを仮にシーズン通して供給するとなった時に、『あの時ああいうタイヤだったよね』というデータが残っていれば、かなり違うと思います」 複数のスペックを持ち込んでの評価テストというのは、全車参加の公式テストで実施すると煩雑になるだけでなく、ドライバーのコメントがバラけてしまい、評価が難しくなるという恐れもある。そのため、従来通り開発ドライバーによるテストでスペックを絞り込み、その最終確認の場として全車参加のテストを活用するという流れがセオリーと言えそうだ。 今後は、完全新規スペックの導入も含めて模索していく構えの横浜ゴム。「ドライバーさんやチームに納得いただく形で供給できればと思います。それに勝るものなしです」と斉藤部長は語った。
戎井健一郎
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