雨のスーパーフォーミュラSUGO戦でなぜアクシデントが多発したのか。複合的要因の考察とタイヤメーカー横浜ゴムに聞く今後の対応
6月にスポーツランドSUGOで行なわれたスーパーフォーミュラ第3戦は、雨と霧の中セーフティカー(SC)ランで始まっていき、SCが解除され各車がレーシングスピードに入るたびにアクシデントが発生するという波乱の展開となった。結局「安全を担保できない」と判断されたことで、10周と少しを走っただけで赤旗のまま終了となることが宣言された。しかもそのほとんどがSCランであり、まともにレースをした瞬間はほとんどなかったと言っていい。 【動画】2024年スーパーフォーミュラ第3戦SUGO:決勝ハイライト 既報の通り、レースを終えたドライバーからは「タイヤが発動(機能)していない」感覚があったとして、特にリヤのグリップ不足を訴える声が多く聞かれたが、そこには複合的な要因があったと考えられている。今回は考えられる要因を改めて列挙しつつ、シリーズのタイヤサプライヤーである横浜ゴムから聞いた今後の対応についても紹介する。
■「新スペックタイヤ×新車両」のデータ不足
SUGO戦は決勝日から悪天候となり、雨量の多かったフリー走行では岩佐歩夢(TEAM MUGEN)がホームストレート上でスピンしてクラッシュ。その後雨量は少なくなっていったが、決勝前ウォームアップでは山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)が最終コーナーでクラッシュし、レースでは大嶋和也(docomo business ROOKIE)と阪口晴南(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)が立て続けに最終コーナーでリヤを滑らせ、外側のバリアの餌食となった。短い走行時間で4件ものアクシデントが発生し、その内3件が最終コーナーでのクラッシュだったというのは、控え目に言っても“異常事態”だったと言わざるを得ない。 実はこのレースは、2023年の途中から新スペックとなったウエットタイヤが実戦で使われる初のレースだった。しかも、同年からは車両がSF23になったことでダウンフォースは減少傾向、さらに今季からはダンパーの共通化(とそれに伴うサードダンパーの機能簡略化)により、タイヤにかける荷重のコントロールも容易ではなくなった。新型ウエットタイヤはSF23の開発車両が散水されたモビリティリゾートもてぎでテストし性能の確認がなされているとはいえ、この新パッケージが実際のレースコンディションでどういう振る舞いをするかは未知数と言えた。 そんな中で発生したアクシデント。横浜ゴム モータースポーツタイヤ開発部の斉藤英司部長によると、この新ウエットタイヤに関しては色々な情報収集をする一方で、製造段階で問題がなかったことは確認が取れているという。ただ第4戦の富士大会からは、参戦ドライバー組織のFRDA(フォーミュラ・レーシング・ドライバー・アソシエーション)からの意見やプロモーターであるJRP(日本レースプロモーション)の方針のもと、2022年まで使用実績がある旧スペックのウエットタイヤが供給されている。 しかしながらこの動きは、新スペックと旧スペックのタイヤとしての優劣を結論付けるものではない。従来型のタイヤを供給するのはひとえに、過去のウエットレースでのデータの蓄積があるからだ。データが蓄積されているということはすなわち、各チーム、ドライバーがセッティングやドライビングの面で、タイヤを“うまく使う”方法をより深く理解していることを意味する。当然、『旧スペックタイヤ×SF23×共通ダンパー』という組み合わせも未知の領域なのだが、少なくとも習熟不足が否めない新スペックから、各チーム経験がある旧スペックに切り替わる点はプラス材料と言える。
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