健闘?失敗?G1初挑戦の菜七子はなぜ敗れたのか
デビュー4年目の藤田菜七子騎手(21、美浦・根本厩舎)は17日、東京競馬場で行われた「第36回フェブラリーステークス」(ダート、1600メートル)でJRA所属の女性ジョッキーとして史上初めてG1レースに騎乗。4番人気のコパノキッキング(セン4、栗東・村山厩舎)を操り、最後方から大外を追い込む“大技”を繰り出したが、5着に終わった。1番人気で第一人者の武豊が騎乗したインティ(牡5、栗東・野中厩舎)が鮮やかな逃亡劇を決めた一戦。菜七子はなぜ敗れたのか。
武豊が作った完璧なレース展開
菜七子騎手のビッグチャレンジはホロ苦いものとなった。覚悟を決め、最後方から我慢のレースをした。最終の第4コーナーで勝負をかけた。メンバー中、2番目となる上がり600メートル35秒2の末脚を繰り出し、次々と9頭を抜き去ったが、先頭までは届かない。5着と、かろうじて掲示板を確保したが、勝ち馬のインティとは5馬身という決定的な差をつけられての“敗戦”となった。 レースは逃げたインティの武豊が支配した。前半の600メートルが35秒8。1000メートル通過も1分00秒2と理想的なスローペース。こうなると、ラストの脚色が鈍ることはない。名手武豊はこの時点で勝利を確信したという。 「パドックで“最初の3ハロンが34秒台になるときついので、35秒台でいきたい”と(野中賢二調教師と)打ち合わせをした。思い通りのラップを刻め、直線を向いてGOサインを出したら素晴らしい伸び。押し切れると思った」 実際に、残り200メートル過ぎでセーフティーリードを奪い、後続をきっちりと完封した。レース後、藤田騎手についてマイクを向けられると「彼女は頑張っています。自分でつかんだものだし、彼女が乗ったおかげで(レースが)盛り上がりました。僕自身は負けなくてよかったなあと。彼女が勝って、僕が2着はきつい。それは避けたかった。でも、立派だと思いますよ。僕も最初のG1は6着でしたから」と笑顔を浮かべ健闘を称えた。 名手が演じた逃亡劇。レース後の検量室ではライバル陣営の嘆きが聞こえてきた。 「ユタカちゃんが完璧な逃げを打ったね。これでは差し馬の出番なし。どうしようもない」 末脚にかけたコパノキッキングと藤田菜七子騎手にとっても、武豊が作ったこの流れは不運だった。展開が向かなかった。 「競馬場もダート1600メートルも何度も乗ったことはありますが、いつもと違う景色に見えました。パドックに行くと緊張して。レース前の歓声を聞いたときは泣きそうになりました」 レース後、菜七子騎手は、そう初体験のG1を語った。