【デスクの視点】JRA騎手のスマホ事案は幕引きも周囲の見る目は… 再発防止策よりも求められている大前提
JRAは13日に、3人の騎手に関して裁定委員会を開催した。しかし、永野猛蔵元騎手は処分の正式決定を前に騎手免許の取り消しを申請して引退。残る2騎手(松若風馬、小林勝太)については、28日に予定されている第2回裁定委員会で最終処分が決まるが、スマートフォンの使用に関する調査を進めていく中で新たに2騎手(佐々木大輔、横山琉人)の関与が判明し、それぞれ30日間の騎乗停止が発表された。 女性騎手として初の重賞勝ちを果たすなど大活躍した藤田菜七子元騎手に続き、4年目で通算111勝を挙げたホープまでムチを置く状況は異常と言わざるを得ない。特に、デビュー2~4年目の競馬学校騎手課程出身者は23人いて、過半数の12人がレース以外のペナルティーで騎乗停止処分を受けた形となった。13日の裁定委員会をもってひとまずの幕引きとなったが、ファンを含めた周囲の厳しい目は当面、続くことになる。
単純な再発防止策よりも…
新たに関与が判明した2騎手に関しては、悪質性が低いと判断されて騎乗停止がすぐに30日と決まり、「重大な非行」ではなく「ふさわしくない非行」と文言にも差があった。騎乗がない日の通信歴であったり、通信時の画像に映っていたりという内容で処分が軽くなったわけだが、先月に通信歴が判明した2騎手(永野猛蔵、小林勝太)についてJRAが入念な調査をした結果、判明したもの。「これで(この件の)調査は全て終了した」と言い切った以上、一連のスマホ事案は〝打ち止め〟と信じたい。 信頼を得ることは難しい一方、失うのはたやすい。目に見えて入場人員や売り上げに大きな打撃が出ていない現状とはいえ、これ以上の不祥事が起きればどうなるか――。ファンだけでなく監督官庁、ひいては国からも厳しい審判が下されるのは明白だ。説明会に臨んだJRA職員には緊張感が漂い、「重い責任を感じる」という言葉はこれまでよりも踏み込んだものだった。また、処分と無縁だった中堅、ベテラン騎手も限られた同じ空間にいたわけで、全くの他人事とは感じていないはず。サークル全体で襟を正していくしかない。 騎手個人に対する制裁の厳罰化は避けられないとみられるが、締めつけだけを強めたところで実効性を持たなければ意味はない。求められているのは単純な再発防止の観点だけではなく、「ファンの信頼を得る」という大前提に立ち返った対策ではないだろうか。
東スポ競馬編集部