<農協改革> JA全中は何が「特別な組織」なのか? 早稲田塾講師・坂東太郎のよくわかる時事用語
JA全中は農協の経営を縛っていない?
それに対して「JA全中の指導は別に地域農協の経営を縛っていない」と反論する側も多くいます。指導や監査が衰退のトリガーを引いたという具体的なデータも存在しません。「自由な農業ができない」と反発する声にも、「品質にこだわっている農家にとっては、安い値段の一括買い上げは何の得もない。マズくてもいいから、とりあえず米を作ればお金がもらえるシステムを維持しているから意識の低い農家が増える」、「農機具の購入が農協から勧められる。経営の観念のない人が農家が、何となく農機具を購入し、農協への借金を背負わされていく」などJA全中というより、全農や地域農協のあり方への不満が目立つのです。 どうやら政権は、JA全中の指導・監査をなくし、さらに全農も株式会社に転換できるようにすれば経営が効率化されるといったプラス面を期待しているようです。しかし「競争させれば競争力がつく」というのは本当でしょうか。地域農協は現在、おおむね健全経営しているとみられます。そこに競争をやみくもに吹き込めば優勝劣敗の法則が働き、赤字転落の農協も出てきましょう。そうなってみて「救わなくてはならない」となれば結局、JA全中のような組織が必要だという堂々巡りにもなりかねず、慎重な議論が期待されます。
--------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】