警察官のカメラ着用、試験導入…「撮られたくない人」置き去りでいいのか? 弁護士「かなり課題ある」と懸念
●(a)職務質問の際の録画について
今年、人種・肌の色・国籍・民族的出自などに基づき捜査対象を選別する手法を意味する「レイシャル・プロファリング」の違憲・違法等を争う「人種差別的な職務質問をやめさせよう!訴訟」が提起されました【20】。 このようなレイシャル・プロファリングによる職務質問は、そもそも職務質問の要件を満たすのかという問題があるわけですが、このような問題とともに、レイシャル・プロファリングによる職務質問の際の録画については、前述した釜ヶ崎監視カメラ事件判決の(5)使用方法の相当性等の要件を欠くものになるでしょう。 また、同判決の判断枠組みに照らすと、警察官職務執行法2条1項に規定される職務質問の要件を満たしただけで、職務質問の際の録画が当然に適法なものになるとはいえないと考えられます。警察官職務執行法2条1項の要件と同判決の判断枠組みは同一ではなく、前者は後者を包摂するものではないからです。 なお、職務質問等の対象となる人の録画が適法となっても、その対象以外の人が録画されてしまった場合は違法になるとは限りません。 京都府学連事件判決も「警察官が犯罪捜査の必要上写真を撮影する際、その対象の中に犯人のみならず第三者である個人の容ぼう等が含まれても、これが許容される場合がありうる」としています。要するに、警察比例の原則に違反しなければ、そのような場合であっても適法となりうるでしょう。 ただし、同判決は、犯罪予防目的ではなく犯罪捜査目的での撮影の事案の判例ですから、本件のように犯罪予防目的の場合の録画の問題については、警察比例の原則がより慎重・厳格に適用されるべきと考えられます。
●(b)交通違反の取締りの際の録画、(c)花火大会などの雑踏警備の際の録画について
交通違反の取締りの際の録画については、たとえば、交通違反が多発する地域・場所【21】以外での録画の場合には、釜ヶ崎監視カメラ事件判決の(2)客観的・具体的な必要性、(4)設置・使用の効果の存在、(5)使用方法の相当性等の要件が問題になりうるでしょう。 また、花火大会などの雑踏警備の際の録画については、イベント等の規模にもよるのでしょうが、同様に、同判決の(2)、(4)、(5)等の要件が問題になりえます。