「女性活躍社会」実現には程遠い? 税制大綱の配偶者控除見直し
●見直しをどうみる?
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室長を務める矢島洋子氏は、今回の配偶者控除見直しが実現しても、パートなどで働く配偶者の労働時間は多少長くなる可能性はあるものの、「女性活躍社会」の実現には程遠いと見ています 。 矢島室長は「例えば事情があって長く働けない専業主婦が年間を通じて働けるようになる、あるいは多少労働時間を増やすなどの効果はあるかもしれない」と述べるとともに、この案は慢性的な人手不足でパートの時給が上昇傾向にある中で、年間を通じてパート労働者を雇用したい企業のニーズに合った案だとも指摘。 一方で、配偶者控除制度そのものの維持により、配偶者たちが今まで通り労働量の調整をする状況に変わりはないと見ており、「企業にとっては、経験を積んでスキルアップしても賃金アップを期待しない労働者を確保できることの意義が大きい。女性の活躍を推進すると政府はいうが、正社員になるなどキャリアアップを図ろうと考える配偶者を思いとどまらせる効果の方が大きいのではないか」と懸念を示します。 「女性活躍社会」の実現に向けては、配偶者控除の撤廃が望ましいと矢島室長。新たな控除よりも、教材費や給食費などを含めた義務教育の完全無償化や、返済義務のない給付型奨学金制度、子どもの医療費無償化の拡充など、子育て世帯の負担を直接的に軽減するような仕組みを検討すべきだとしています。 (取材・文:具志堅浩二)