「女性活躍社会」実現には程遠い? 税制大綱の配偶者控除見直し
政府の2017年度税制改正大綱では、焦点だった「配偶者控除」が対象となる配偶者の給与収入の上限を、103万円以下から150万円以下に引き上げることになりました。当初は配偶者控除を廃止して共働きにも適用される「夫婦控除」創設案も浮上しましたが、上限額の引き上げでの決着となりました。今回の改正は女性の働き方にはどう影響するのか。与党税調での議論の経緯と合わせてみてみます。
●配偶者控除とは
ここでは便宜上、配偶者を妻、納税者を夫として説明します。配偶者控除とは、妻がパートやアルバイトなどで収入があった場合、その上限額が103万円以下なら、夫の所得から38万円を控除して、納める所得税の金額を減らせるという制度です。 妻の収入が103万円を超えてしまうと控除が受けられないため、年収がこの金額を超えないように妻が働く量を制限してしまう風潮があります。これを「103万円の壁」と呼び、女性の就労拡大を妨げる要因になっているなどと指摘されていました。 実は、配偶者控除に加えて、妻の収入が103万円超~141万円未満の場合に、38万円から3万円までの間で段階的に控除額を適用する「配偶者特別控除」という制度もあります。この制度には、夫の給与収入が1220万円を超える場合は、控除が適用されない所得制限が設けられていますが、配偶者控除には所得制限がありませんでした。 この配偶者特別控除によって、たとえ妻の収入が103万円を超えても、世帯全体の収入は103万円以下の時よりも下がらない仕組みになっています。にもかかわらず「103万円の壁」がなくならないのは、企業の配偶者手当の支給基準として103万円が採用されていることや、103万円が心理的な壁として作用しているためとの指摘もあります。配偶者控除見直しの議論が浮上したのには、こうした背景があります。
●自民税調での議論
自民党の税制調査会では、財務省による複数の試算結果を踏まえて検討した結果、38万円の控除が受けられる配偶者の上限年収を103万円から150万円に引き上げる方針を決めました。財源としては、控除が受けられる夫に所得制限を設ける案を盛り込みました。 これによって、配偶者特別控除で38万円の控除が受けられる妻の収入を150万円まで引き上げる一方、従来は配偶者特別控除のみにあった所得制限を配偶者控除にも適用。納税者の給与収入が1120万円以下なら38万円の控除が受けられますが、以降、段階的に控除額が減額され、1220万円を超える場合は控除が受けられなくなります。 財務省では、この案の場合、従来よりも約300万人が負担減になる一方、約100万人が負担増になると試算しています。