【大阪府泉佐野市に聞く】「返礼品、なければつくる」 『ふるさと納税』復活から全国3位への返礼品開発戦略
醸造所建設を市から提案
<醸造所建設を市から提案> ――クラフトビールメーカーのヤッホーブルーイングのビールも返礼品として人気だ。 ヤッホーブルーイングも、「#ふるさと納税3.0」の仕組みを活用している。同社に対しては、当市から、市内に「醸造所」を作ってもらうプロジェクトをもちかけた。 ヤッホーブルーイングは長野県の企業だが、地場産品のルールができる以前から、当市がヤッホーブルーイングの商品を返礼品として扱っており、関係性があった。当市がプロジェクトを持ちかけたのが、同社が大阪営業所を開設するタイミングでもあったため、積極的に検討してくれた。ヤッホーブルーイングが、醸造所を作るためのプロジェクトを立ち上げ、CFで支援を募った。 昨年だけでヤッホーブルーイングのプロジェクトの支援で、12億円が集まった。同社はエンターテイメント性を兼ね備えた大阪ブルワリーの開設のために、30億円を超える投資をしてくれている。 ヤッホーブルーイングの「よなよなエール」が返礼品として人気ということもあるが、ヤッホーブルーイングの会社としての熱意がなければ、実現はしなかったと考えている。 <総務省狙い撃ちにも屈しない> ――泉佐野市がふるさと納税に大きく注力する狙いは? もともと泉佐野市は、全国的に見てもかなり財政が厳しかった。1999年には、約1600億円の借金があった。1994年の関西国際空港開港に合わせて、インフラの整備を行ったが、開港時にはバブルがはじけていて、空港関連税収が機能しなかったことなどがあった。その後、公共物のネーミングライツや法定外税(地方税法にない、条例で定めた税目)の導入など、さまざまな施策を展開してきた。ふるさと納税制度についても、税収外収入を得る施策として力を入れている。 当市としては、ふるさと納税制度を活用して、特色ある行政サービスを行っていきたい。 寄付金は、主に子育てや教育関係の行政サービスの充実に活用している。財政が厳しかった時代は、近隣市町村に比べて劣っていた行政サービスも、今は寄付金を活用しながら、近隣市町村並みに提供できている。子育てや教育では、近隣以上だと考えている。 2023年10月には、「熟成肉を返礼品とする場合、同じ都道府県内で生産されたものでなければならない」とする、個別返礼品に対する規制が導入された。区域内の加工品を、原材料で縛る内容になっている。 熟成肉が返礼品として人気だった当市への、総務省からの狙い撃ちだったとも言われている。規制の強化はあるが、地元の事業者の成長や、地域の活性化のために、今後もふるさと納税に注力していきたい。
「日本ネット経済新聞」記者 星野 耕介