【大阪府泉佐野市に聞く】「返礼品、なければつくる」 『ふるさと納税』復活から全国3位への返礼品開発戦略
大阪市泉佐野市は、2023年度のふるさと納税の寄付額が、前年度比27%増の175億1400万円となり、全国の自治体の中で3位となった。泉佐野市は2019年に、地場産品でない返礼品を提供していたことが問題視され、一時的に制度から除外されていたが、最高裁の判決を経て2020年に復帰。復帰から4年で全国3位となった。泉佐野市・成長戦略室ふるさと創生課の塩見健氏は、「寄付額全国上位は、海鮮や肉など、強い一次産品が多いが、我々は地場産品が少なかった。『地場産品がなければ作ろう』と考え、『#ふるさと納税3.0』の仕組みを使って新しい返礼品や既存の返礼品の生産能力を増やすための工場を作った。そうやって、人気の返礼品を作っていった」と話す。塩見氏に、人気の返礼品開発の裏側について聞いた。 【画像5点】人気の返礼品や地域活性化の実績 <返礼品開発を補助する制度> ――泉佐野市の人気の返礼品について聞きたい。 「牛ハラミ肉 秘伝の赤タレ漬け」と「牛タン暴れ盛り」の、2種類の加工肉が、人気が最も高い返礼品となっている。 「牛ハラミ肉 秘伝の赤タレ漬け」は、当市が考案した、「#ふるさと納税3.0 」の取り組みにより、安定供給を実現した返礼品だ。この取り組みでは、企業から地場産品の創出に向けた企画を公募。資金を、クラウドファンディング(CF)の寄付により調達する。CFでの寄付が目標金額に達すれば、「#ふるさと納税3.0」に採択され、寄付の4割を補助金として交付するという制度になっている。 寄付の半分は返礼品や事務手数料などに充て、4割を補助金として交付する。そのため、市として収入は残らないが、地元の事業者を成長させる取り組みになっている。 ふるさと納税の寄付額上位には、北海道や九州など、地場産品の強い自治体が多くランクインしている。 当市のような、特産品や資源の少ない自治体が競争するには、創意工夫とアイデアが必要だ。当市では、制度に復帰した当初からこの取り組みを推進している。 人気の返礼品である加工肉は、地元の老舗焼き肉食べ放題の飲食店に「牛ハラミ」を提供するアキラ商店が、もともとは担当者4人で製造していた。コロナ以降、「牛ハラミ」が返礼品として人気となり、工場を新設するということになった。その際に、「#ふるさと納税3.0」の仕組みを活用してもらった。 その結果、現在は、「牛ハラミ」の工場で70人以上が働いている。地元に雇用を生んでおり、地域の活性化につながっている。 アキラ商店では、「泉州元気ハラミ」という商標登録もしていて、ブランド化している。「牛ハラミ」は、アキラ商店の自社ECサイトでも販売している。アキラ商店の工場に新たに設置した直売所でも販売を行っている。ふるさと納税の対象ではない、地元の人でも、人気の「牛ハラミ」を購入できるようになった。 アキラ商店では、工場のさらなる増設も計画していると聞いている。本来は捨ててしまう牛ハラミの「すじ」を使った新たな返礼品も、「#ふるさと納税3.0」の仕組みを使って新事業として立ち上げ、開発を行ってしている。