すでに住職のいない寺が2割超……「葬式仏教」が生き残りをかけて編み出している「挽回の一手」
2040年、寺の3割が消滅
「江戸時代以来の檀家制度はバブル経済の崩壊とともに崩れ、仏教の各教団は衰退の道を歩んできました。 【マンガ】元火葬場職員が明かす…「死刑囚の火葬」と「通常の火葬」の決定的な違い そこにコロナ禍が重なり、今ではお経をあげず、通夜や告別式も行わずに火葬だけをする『直葬』や、家族だけで執り行う『家族葬』も増えてきました。 日本人の生活習慣の中から仏教的儀礼が排除され、どの教団も窮地に立たされています」(花園大学特別教授の佐々木閑氏) 日本人にとって葬式は宗教と接する貴重な機会だったが、それも昔の話。コロナ禍後、僧侶を呼ばない「無宗教葬」は全体の3割を超えるようになり、葬儀の平均費用はここ10年で半減している。 「仏教に関する実態把握調査(2022年度)」によると、自身の葬儀を一日で終わらせたい人は60代以上で約3割にも上った。僧侶を呼ばない火葬のみを希望する人も40~50代で約2割もいる。 他方、少子高齢化に伴う人口減少により、寺の後継者不足が深刻化し、今から16年後の2040年までには、現在ある寺の3割が消滅するという調査もある。 浄土宗、浄土真宗、曹洞宗、天台宗……これら伝統仏教は、生き残りをかけて必死にもがいている。その様々な施策を見ていこう。 「葬式ばかり行い、教えを説かない仏教」――そのことを揶揄して、伝統仏教は、しばしば「葬式仏教」と呼ばれる。現在、その情勢はどうなっているのか。 文化庁の最新調査によれば、日本の宗教法人で数が最も多いのは神道系で約47%。それに次ぐのが約43%の仏教系だ。
住職のいない寺が2割超
いわゆる「新宗教」を除いた仏教のうち、最も信者数が多い宗派は京都・西本願寺を本山とする浄土真宗本願寺派で、775万人いる。 次いで、2位は京都・東本願寺を本山とする真宗大谷派(728万人)、3位は京都・知恩院を本山とする浄土宗(602万人)と、1~3位を浄土系の宗派が占める。 以下、禅宗系の曹洞宗(本山は福井・永平寺と神奈川・總持寺)や日蓮宗(総本山は山梨・身延山久遠寺)と続く。 これから、宗教法人も信者もどんどん数を減らしていく。 浄土宗の僧侶・ジャーナリストで、『仏教の未来年表』の近著がある鵜飼秀徳氏が語る。 「私の所属宗派である浄土宗は全国に約7000ヵ寺を抱えますが、その21%程度が空き寺になっています。また曹洞宗は約1万4600ヵ寺を抱えますが、約25%にあたる約3600ヵ寺が空き寺になっていると推測されます」 宗派にかかわらず、住職がいない寺が4分の1もあるというのは驚きだが、地方では多くの寺院が無住化し、1人の住職が近隣にある同じ宗派の「兼務寺」を14も持った事例もある。