お米の生産コスト上昇 肥料高騰が直撃 小規模農家〝採算割れ〟も
米を作るのにかかる経費(生産費)が高止まりしている。農水省の調査によると、2023年産の60キロ当たりの生産費は、「個別経営体」が前年産比4・4%(675円)増の1万5948円で、過去10年で最大となった。ロシアのウクライナ侵攻などに伴う肥料高騰が直撃した。「組織法人経営体」は1万1841円で0・8%(92円)下回ったが、依然高水準。持続可能な経営に向け、一定の米価上昇が避けられない実態が浮かぶ。 【グラフ】米生産費の推移 同省は、個人や家族で営む個別経営体は1951年産から、農業法人や集落営農法人など組織法人経営体は2017年産から米の生産費を公表している。 経営規模別に見ると、個別は規模が大きくなるほど、生産費が下がる傾向にあった。作付面積が3ヘクタール未満では1万7000円を超えたのに対し、15ヘクタール以上では組織法人と同水準の1万1000円台に収まった。組織法人は経営規模別の生産費を公表していない。 同省がまとめた23年産米の「相対取引価格」は、60キロ当たり1万5314円。JA全農など集荷団体と米卸の間の取引価格であり、生産者の販売価格はさらに下回るとみられる。個別経営体は経営規模によっては、販売収入が生産費を下回る“採算割れ”となっている格好だ。 10アール当たりの生産費は、個別が3%(3931円)増の13万2863円、組織法人が2・7%(2587円)増の9万9462円だった。いずれも2年連続の増加。肥料代が個別は28%(2754円)、組織法人は28%(2513円)増え、生産費押し上げの主な要因となった。 23年産は、担い手の生産費を60キロ9600円に引き下げる政府目標の期限に当たる。同省は、今回公表した調査結果を再集計し、来年3月にも担い手の生産費を公表するが、目標達成は難しいとみられる。 (北坂公紀)
日本農業新聞